1.僕は感想乞食
この小説は感想乞食です。
早朝。
一人暮らしの家から出て、畑仕事をする。
両親は当時6歳だった僕と借金を残して夜逃げしたらしい。
両親が居なくなった僕を、神父様をはじめとする村の人達が助けてくれたおかげで、僕はこうして生きている。
ついでに借金もチャラにしてくれよと思わなくもないけれど、奴隷落ちしなかっただけマシなのだろう。
村によっては、食い扶持を稼ぐために孤児を奴隷として売り出す所あるみたいだし。
そして僕、ズークは今日で15歳になった。
借金返済のために、今日も僕は畑でタダ働きをさせられている。
あと3年で開放してもらえるとのこと。
僕が収穫した作物すら、僕の物ではない。
なので昼に近場の森で獲物や木の実などを手に入れ、自分が食べる物を確保する必要がある。
「こんな貧乏暮らしをしているのも、僕を捨てたクソ親どものせいだ。
ああクソが、クソが、クソがッッ!」
暴言を吐きつつ畑仕事を終わらせると、近所の教会に向かった。
木造のボロい教会に入ると、痩せた神父様が掃除をしていた。
そして僕を見るなり「待っていたぞ」と聖堂に案内された。
15歳になった僕は、神様からスキルを授かる事が出来る。
スキルについて、教会の神父様が話し出す。
「神様は15歳を迎えた少年・少女に、その年まで生きた事へのご褒美と、これからも頑張れという鼓舞の意味で、スキルをお与えになる。
スキルは1人につき、基本的に1つ与えられる、異能の力だ。稀に2つ3つ与えられる者が居るが、今はその話はいいだろう。
さぁ、神の像に祈りを捧げよ。神はお主にふさわしいスキルをお与えになるだろう」
僕は女性の神様像にお祈りする。
何か凄いスキルください!
一生働かなくても暮らせるようなチートスキル、カモン!
『あ゛あ゛ん?! こちとら残業に次ぐ残業で寝不足、お肌もボロボロになってるってのに、人間のお前は楽して生きたいだぁ?!
ふっざけんじゃないよ! お前にはこのスキルがお似合いだゴルァァーーッ!』
何かオバサンっぽい声の罵倒が聞こえた気がした。
そして僕の体がピカリと光る。
「こっ……この輝きは……ユニークスキル!」
ユニークスキル。それは唯一無二のスキル。
この世界で、他の誰も所持していないスキル。
そんなスキルを僕は授かったのだろうか。
これはお金になるのでは?
神父様は【ステータス転写】というスキルを持っている。
彼は植物紙を取り出し、右手を光らせスキルを発動し、ステータスを転写したようだ。
「これがズーク、お主の新しいステータスだ!」
神父様は、転写したステータスを僕に見せてくれた。
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名前:ズーク
Lv:3(15歳)
種族:人間
スキル:【感想乞食】
ステータス:
HP 50/50 MP10/10
ATK10 DEF10 MAT8 MDF8 SPD7 INT10 LUK10
称号:
ドコノ村育ちの少年。女神にお祈りした際に余計な邪心を抱いたため、ハズレスキルを押し付けられた。
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【感想乞食】
説明:異界の感想欄から力を得たり、災いを引き寄せたりするスキル。
感想1つにつき1ポイント獲得。
毎話、所持ポイント数/5(小数点以下切り上げ)回以上スキルを使用すること。
ポイント1使用……ランダムに感想を1つ発動。その話限りで効果は終了する。毎話必ず1回は使うこと。
ポイント3使用……ランダムに感想を1つ発動。効果が永続する。所持ポイント数5以上の場合、必ず1回は使うこと。
ポイント8使用……自分で感想を1つ選んで発動。効果が永続する。
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……何だろうコレ。
感想欄ってのがそもそも何なのか分からない。
力を得るのはともかく、災いって引き寄せちゃ駄目なんじゃ?
「ユニークスキルを持つ者は、1000人に1人だと言われている。
ただし、今回のように訳のわからないスキルになる者も少なからず居る。
まぁ気にするな。なるようになる」
神父様は慰めてくれたけど、これってハズレスキルなの?
クソなの?
とにかく試してみないと分からない。
僕は家に帰って、スキルを使ってみることにした。
この小説は読者の感想によって成り立っています。




