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8話 イベント発生

結局妹さんを探しに行こう、という事になって探索を続けることになった

ローダン君も一緒に……と思ったんだけど調べることがあるらしくお留守番をしている。


「検討は付いてるの?」

「まず今1度城に向かってみようと思う周囲にいる可能性もあるからな」

「おっけ〜」


ゆっくりと歩みを進めるルネン君と手を繋ぎながら時折出現する魔物を倒しつつ先へと進む。

私のスキンシップに慣れたのか諦めたのかルネン君は

もう抵抗はせずこうして受け入れてくれる。なんとも言えない

表情は浮かべるけど


「ここだな」

「なにもないね……」

「あぁ、なんの反応もない」


城跡と思しき辺りでルネン君は足を止めた。

周囲は完全にまっさらとお城の影も形もなく

ぽつらぽつらオブジェクトが残っているだけだった


「ふむ……ここから東に進んだところにやや強い魔力の反応

南東に複数の生命反応…………誰かいるかもしれん」

「リーシアちゃんかも」

「それはわからんが向かってみよう」


城跡を惜しむこともなくルネン君はあっさりと

その場を後にした。思う所はあるだろうに……強いなぁ


「この身体は不便で適わん」

「そうなの?」

「小さく力も弱い。無駄な魔力を浪費せずに済むのはいいが

翼程度は生やしてもいいかもしれんな。移動が手間だ」

「元はどんな姿だったの?」

「…………翼と尾が生え、背丈も貴様より大きい。

不必要に恐怖心を与えぬため人の姿を模しているが別のものになる事も出来る」

「ドラゴン的な?」

「それに近いな」

「凄いねぇ……」


能ある鷹は爪を隠すと言うが、聞けば聞くほどルネン君の

ポテンシャルが底知れない。


「元の人型程度にはなる事は可能だろうが、直ぐに戻ってしまうだろうしな」

「そうなの?」

「あぁ。なにぶん自らの限界を超えた魔力を消耗したゆえ

完全に回復してからでないとこの身を変質させる事さえままならない」

「全速力で走り切った後に少し休憩して、また走り出してもすぐバテちゃうみたいな感じ?」

「……まぁ、そうだ」


これまで魔力を使うということがいまいち何をどう消耗するのか

理解してなかったんだけど、この世界に来てからなんとなく把握

する事ができた

私からしたら消耗するのはMPのみだったけどそうじゃないようで

魔法を使うにはスタミナと精神力を消耗するらしく、強大な

魔法を使おうとすればするほどその消耗率は増えるようだ

自分の身体を変化させるということはそれだけ大変な事なのだろう


「歩き疲れたなら私がだっこしてあげるよ。ほら!」

「……………………そうだな」

「あれ、素直……」


私が腕を広げるとルネン君は大人しく私に収まってくれた

拒絶されるものだと思った「我が本来の姿を取戻した時、覚悟をしろ」とやや物騒な事を言ってたけど聞こえないふりをする


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「ここ?」


小1時間歩いた所で集落のような場所にたどり着く

周りは完全に消滅しているのに、そこだけは守られたかのよう

に残っていて、なんだか少し不気味だ


「そうだ。中から複数の生命反応を感じる

……だがここは……」


ルネン君がやや怯んだように身を固くした中に何かあるんだろうか


「もしあれなら私一人で行くよ?」

「いい、大丈夫だ……」


マントをフードのようにして被り私の腕の中から降りたルネン君は先導するように先を進む。

どことなくそわそわして、なんだか……何かを怖がっているように見えた


「できるかぎり手早く情報を集めるぞ」

「うん……本当に大丈夫?」

「大丈夫だと言っている。」


ぐい、私の手を引きやや早歩きで集落の中に入る

一瞬ぴりぴりとした痛みが私の身体に走った


「待って、ルネン君、嫌な予感がする……」

「何……?」


なんだか怖くなってルネン君を引き止め、集落の外へ出ようと

するとバチバチとした痛みが全身を駆け巡り、思わずあとすざりする


「……!な、何で……!?」

「どうした」

「わからない。呪いなのかな……でも私何にも干渉してないし」


しいていうならこの地に足を踏みいれただけだ

訝しげな目線で私を見つめるルネン君の先には綺麗な

女の人が佇んで居てにこりと柔らかい笑みを浮かべている


(いつからそこに……)

「……こんにちは。外からいらっしゃった方ですね?」

「…………っ!」


ルネン君はその声を聞くなりフードを更に深くかぶり私の後ろに姿を隠した


「ふふ。はじめまして私はヒェベルンナと言います

旅人さん、あなたのお名前は?」

「わ、私は緋衣です……はじめまして」

「緋衣様ですね。ではそちらの男の子は……あなたの

弟さんでしょうか?」

「……そうだ」


後から決して女性に顔を見せないようにルネン君が

そう答える。様子がかなりおかしい目の前の女性に怯えているようだった


「お名前は?」

「………………リネン」

「リネン様と言うのですね?ようこそお二人共、歓迎しますわ」


朗らかな笑みを浮かべたヒェベルンナさんという女性は

手招きをし私達をある、建物へと案内してくれた


「こちらは旅の方にお貸ししている場所になります

必要最低限の物しか置いていないので

なにか足りないものがあれば仰ってくださいね?」

「あ、ありがとうございます。でも私達、長居する

予定はないんです」

「まぁ……そうおっしゃらず、せめて1晩だけでもお泊まりになられて?

そちらの弟さん随分と疲れている様子ですし……お願いです。

外から旅の方が来ることなんて滅多にないんです。

お話お聞かせ願いたいですわ…」


柔らかい表情とは裏腹に拒むことは許さないという圧を感じる。

どうやら従うしかなさそうだ


「わかりました。ではお言葉に甘えさせて頂きます

……弟はひどく疲れているようなので少し二人だけにして頂けますか?」

「ええ、勿論ですわ。後程夕食を運ばせて頂きますので

是非召し上がってくださいね?」


それでは、と再び微笑んでヒェベルンナさんは立ち去った

その姿を見送って建物の中に入る

外観はログハウスのようで中は広々としていた

所々になにやら集落のシンボルのようなものが飾られていた


「大丈夫?ルネン君……」

「あぁ、大事無い、だが息がつまる

……それとここではリネンと呼べ

誰に聞かれているかわからん。偽名で通す」

「わかった」


警戒するように建物の中を調べ終わると一息ついた

ようにソファーに座り込んだ


「……はぁ。まさかこの地に再び足を踏み入れるとはな」

「前も来たことあるの?」

「ある。というより我はこの土地で生まれた」

「え!?そうなんだ……じゃあなんで…」

「……我の見た目は人とは異なる」


フードを外し、ルネン君はこちらに向き直る

見た目はほぼ人間と変わらない彼の人と異なる所々言えば

頭に生えた角、少し尖った耳……それと底無しの魔力

でも……それだけ


「そこまで違いはないと思う、けど」

「ふ、貴様はそう言うか……だがこの集落のものはそうではなかった

ここに住むものは自分達と違うものを酷く嫌う」

「我とリーシアは竜族と人間の間に生れ落ちた子供だ。

母は我とリーシアを生んだ罪で殺された」

「……そんな」

「このままここに留まれば二人とも殺されていただろう

その前に母の知人が我等を連れ逃げ出した。

それ以来ここには足を踏み入れてない」


自分の両親が殺された土地、下手すれば自分達さえ殺されていた場所……

ともすればルネン君がここに長居したくない気持ちはわかる

それにここは凄く嫌な雰囲気で包まれているし……居心地が悪い


「リーシアちゃんの情報を集めて早く出よう」

「……そう、だな」


限界が来たのかルネン君は眠たそうにゆらゆらと

船を漕いでいた。そっと抱き上げベットに寝かしつける


「今は少し休もう。私が見張ってるから安心して」

「……あぁ」


酷く疲れた様子だったルネン君は力尽きるように眠りに着いた

この場所はきっとルネン君にとってとても相性が悪いのかも

しれない……無意識に魔力を消耗してしまっているのかも


(今すぐここから出たいのに……)


先程集落の外に出ようとした瞬間、全身に電気が走った

特になにかに干渉した理由でもないし原因があるとすれば

この場所自体にある気がする…………


(ローダン君に聞いてみようかな)


考えてもわからない。ローダン君なら何か知ってるかも

そう思いアイテム欄から端末を取り出す。

見た目はほぼスマホのそれを簡単に操作し、ローダン君を

呼び出すと

時間を置かずすぐに繋がり、画面にローダン君の顔が

浮かび上がった


「緋衣様、どうかされましたか?」

「あのね聞きたいことがあって……」

「はい」


現状をかいつまんでローダン君に説明すると

すぐに原因がなにか分かったようだった


「……それは」

「うん」

「緋衣様、好感度システムをご存知ですか?」


好感度システム……確か特定のキャラに好感度という物が存在していて、キャラにアイテムを渡したり頼まれたクエストをクリアしていくことによって仲良くなれて特別なシナリオが見れたりイベントが起こったりするシステムだ


「知ってるよ」

「緋衣様が今体験しているそれはいわばそのイベント

ルネン様の好感度が一定数上がったことによって発生

したものだと思われます。」

「……強制イベントって事?」

「そうですね。ですが悪い事ではありません

イベントクリア後には必ず何かしらの報酬を受け取ることができます。

流れに身を任せ、終わるのを待つ方が利点が多いかと。

無理に抜け出そうとするとまた激痛が緋衣の身体に走ります」

「なるほどね……でも嫌な予感がするんだよ」

「緋衣様なら大丈夫ですよ」


不安になる私を他所にそれはいい笑顔でガッツポーズをしてみせるローダン君

私を過大評価しすぎではないだろうか……?


「うーん……取り敢えずなるようにしてみるよ。

教えてくれてありがとうね」

「はい。また何かあればご連絡を、お気をつけて」


……好感度システム……ルネン君と仲良くなれているようなのは

大分嬉しいけどこのイベントはとても不穏な予感がする

ルネン君に何かしらの危害が加わないといいけど

もしなにかあったら私がなんとかしないと


横で寝息を立てていたルネン君の頭をそっと撫でる


「私……”緋衣”は強い。何があってもきっと大丈夫」


心の奥底で少しだけ生まれた恐怖心を押さえつけるようにして

自分に言い聞かせるように呟いた


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