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7話 報告

「おかえりなさいませ。緋衣様」

「ただいま。ローダン君」


あれから一先ず現状報告の為に1度自室に戻ってきた。私の側にはローダン君を警戒するようにびたりと私にくっついてるルネン君が居る。

どうやら先程のイベント(と呼ぶことにする)で私への警戒心がかなり薄れたようで、こうして少なからずは信用してくれているようだ


「そちらの方は?」

「道中で出会ったんだ。名前はルネン君」

「ルネン様……ですか……」

「知ってる?結構重要そうな子なんだけど……」

「……………………。いえ……」

「あれ、そっかローダン君なら知ってるとばかり」

「緋衣様が一度見た覚えのある方や物は記録して

いるのですがそうでない限りは……」


ゲーム内ではサポートキャラというのもあってか色んなことを説明してもらっていたので、勝手になんでも知っているものだと思い込んでた。というよりデータとして残ってるものだと思ってたけどそうではないらしい


「お役に立てず申し訳ありません。

ルネン様これからよろしくお願いします」


にこ、とローダン君がルネン君に微笑んで見せたけどルネン君は無反応でそっぽを向いてしまっている。そもここに来てから一言も言葉発していない。

ローダン君が「嫌われてしまったのでしょうか……」と心無しかしょんぼりしてしまった。


そんなことないよローダン君……ルネン君は警戒心が強い子なだけなんだよ


「それでね報告が……」


なんだか微妙な空気を変えるべく外であった事を報告する。

外はほぼ白紙のようになり朽ち果ててしまっていた事

敵は相変わらず一部ではあるが湧き出ていた事

それと自分の肉体……疲労感がない事とか攻撃が痛すぎるとか

あとはルネン君の事について少しだけ


「ふむ、外については概ね予想通りですね。

恐らく世界を構築していた魔力は完全に消滅した訳ではなく

形を保つことが出来ず空間や別の場所に散らばってしまっているのだと思います。

それを元通りに再構築する魔法を使用すれば世界は元の姿を取り戻す事ができる筈です」


にこ、と期待に満ちた視線を向けられ居たたまれなくなる

そんな大それたこと出来るはずがない


「……わたしにはむりです」

「あちらの世界からこちらにいらっしゃった方は

何かしら世界のシステムに干渉できる能力をお持ちです。

ですので緋衣様にも出来ないことはありません!

……と言いたいのですが かなり複雑な魔法の為、

いきなりやるのは確かに少々厳しいかもしれませんね」


そうなのか……でも未だその能力とやらは発揮できて

いる気がしない。今後覚えるにしても扱えるかは不明だ


「役立たずでごめん……」

「いいえ、そんな事はございませんよ人には向き不向きと言うものがあります。

それにもう一つ、可能性を見つけました」

「可能性?」


「ルネン様は世界を作り魔物を生み出し、空間をも繋げるお力をお持ちだというお話でしたね?

それはこの世界のシステムに干渉する事ができる力を保有してるという事です。」

「うん……?」

「ルネン様は世界を修復する事ができる可能性があります」

「……!凄い!ルネン君!」


「……勝手に話を進めるな」


これまで沈黙を保っていたルネン君が堪え切れなくなったのか

半ば呆れ顔で口を開いた。


「我は確かにその男が言ったようにこの世を一部、修復する事は可能だろう。

だがそれは力が万全である事が大前提である」

「今は万全ではないと?」

「あぁ、魔力が足りん。一度この身に万全の魔力を取り込むことが出来れば

空間の魔力を操る事なぞ造作もないし、休息を取れば回復する事も出来るが消耗しすぎたのでな」


「成程。ではその魔力を取り戻す為には何が必要なのでしょうか」

「大地や生命から取り入れる必要があるが手間だ

 それよりも早い方法が1つだけある……賭けになるが」

「それは何?」

「我の妹を見つけ出すことだ」


妹さん!確かリーシアちゃんと言う子だった

お城を飛び出してしまったという話だったけど

もしかしたらどこかで助けを求めているかもしれない。

出来ることなら見つけてあげたい。


……でもリーシアちゃんを見つけることが魔力を取り戻すという事にどう結びつくんだろう?


「我の妹は知能と能力こそ我に劣るが膨大な魔力と力を保有している。

その妹の力を幾分か取り入れれば以前の魔力と同等になるだろう。

何、国の為だと言えばあやつは了承するはずだ」

「……まぁ、生きていれば、の話だが」


あまり期待をしていない、という素振りを見せ

平静を装う振りをしているルネン君の頭を撫でる


「……おい」

「大丈夫。必ず見つけ出そう」


安心させるように頭を撫でる。怒られるかな?と

少しだけ身構えたけど不服そうな表情は浮かべているものの

抵抗はしていない。かわいい


「それでは当面はルネン様の妹様を見つける事を目的に……という事でよろしいでしょうか?」

「そうだね」

「ああ」


よし、頑張るぞ!とぐっと拳を握ってみせるとローダン君は少し微笑んだあと、険しい表情に変わった。


「……それと、緋衣様について、数点宜しいでしょうか」

「うん」


「まず、肉体的疲労が感知できない点についてです

こちらは恐らく緋衣様の精神と肉体が完全に噛み合っていないことに関係しているかと思われます。

痛覚はご健在だと言うことでしたので時期に馴染むはずですが……」

「そうなんだ?だいぶ慣れてたつもりだったんだけと……

あ、と言うか戦闘中痛すぎて心が折れそうになっちゃったんだけど痛みを軽減とかできたりしない……?」


あの魔物から受けた痛みを思い出して背中をさする

今後あれより痛い事が起これば恐怖で動けなくなって

しまう可能性がある。それだけは避けたい

いざという時に動けないのではそれこそ危険だし


「…………不可能ではありません。痛覚を遮断するシステムを

使用することができます……が痛みを完全に途絶えさせてしまいますと

怪我も認知出来なくなってしまい自らの限界を認識しにくくなってしまいます。

ですので完全に遮断するよりは少しは残されていた方がいいかと」


「成程ね、わかった。じゃあお願いしてもいい?」


ローダン君は頷き私のこめかみに手を触れ何やら呪文のようなものを唱えた


「…………これで緋衣様の痛覚システムは軽減されました

 お身体に異常はございませんか?」

「うん。大丈夫……?」


今ので?異常どころかなんの変化もない。

そんなサクッと切り替えられるものなのか……

横を見るとルネン君と目が合った


「ちょっと叩いてみてくれない?」

「断わる」


きっぱりと断られてしまった。ローダン君にお願いしても「それはちょっと……」

と断られてしまったので仕方なしに自分で自分の頬をつねる

痛…くはない…のかな…?よくわからない


「…所で我も気になる点がある」

ひゃい。ふはひ?(はい。何?)

「頬を抓るのを止めろ。貴様が我の呪いを弾いている件についてだ」

「それは装備だよって事で解決したのでは…?」

「概ねな、だが不可解な事がある

我が保有している呪いを貴様は誤認している可能性がある」


一瞬、空気がピリピリと張り詰める

ルネン君は鋭い視線で私とローダン君を交互に見つめ、すぅと表情を和らげた。


「……どうだ」

「え……?」

「我は厄介な瞳を保有している。この瞳で睨めつけられたものは呪われる。」

「そう……なんだ。うーーん身体はなんとも……」


めちゃくちゃ怖かったけど。という感想は言わないでおく


「そうか。ではお前は?」

「僕はそもそもそのような状態異常、物理攻撃、魔法を

受け付けません。フィールド上に出ればどうなるかはわかりませんが」


この自室にいる限りローダン君は無敵ということ

なのか。または……そのようにプログラムされているのか


「ふむ。だが城で起こったことの説明がつかぬ

貴様は我に触れた際呪いを受けている様子だった

手が痺れる程度のダメージを受けているようだと言っていたが

外に出た途端、その素振りは見えない」


「自動回復したんだと思うよ?」

「我の呪いは永続的なものだ。自然治癒は有り得ない

何か特殊な魔法などを使うかしないと呪いは消えない

どうやらそのようなものを使っているようには見えなかった」

「うーん……?」


「お前は、どう考える。」


ルネン君に促されローダン君は一瞬考える素振りを見せて

直ぐにルネン君に向き直した


「そのダメージは呪いではない可能性があります」

「ほう」


「NPC……失礼、この世に存在する生命は生まれながら

ある程度の行動、発言を制限されています

創造神によって決められた事以外の行動をする事は基本的にできません。」

「それもこの世界が崩壊し、神の手は離れた今

ある程度の制限は消えましたが、そうあるべきだと、決めつけられたものは消えなかった。

だからルネン様はあの城から出る事ができなかったんだと思います」

「我はあの城に居るものだと、決められていたと?」

「はい。妹様の場合は少し訳が違ったようですが」


創造神(プログラマー)によって行動をプログラムされ、ある程度決定づけられた行動の範疇を超える行いは出来ないという事……サービス終了した今少しは自由が効くみたいだけど根本的な所は変えられないのだろう

自分の意思で動けない、又はそうしてるつもりでもそれは

決められた行動だ…というのはなんとなく気味が悪いものだ


「ですがそれを緋衣様が解放した。今の貴方は自らが望むまま

思うままに身体を動かせている筈です」

「私が解放した……?」

「ええ、我々が自らの意思で神による成約……呪いのようなものですね。

それから逃れることはできません。選ばれた貴方だからこそ干渉することができ、解放する事ができたのだと僕は推測します」


「緋衣様がルネン様に干渉した際に受けたダメージは

 ルネン様からの呪いでは無く、この世界からの呪い…なのかと

 痛みを代償にこの世のNPCを解放する力を授かったのかもしれません」


「ほ~ん…?」

「ふむ。この男は多少頭がまわるようだな貴様と違って」


ばっさり毒を吐くルネン君に何も言えない。馬鹿で申し訳ない限りなんだけどローダン君の言ってることがいまいち頭にちゃんと

入っていない


「だが…何かまだ隠しているな?いや……()()()()のか?」

「……」

「貴様もまた、呪いに縛られている身という事か、難儀なものだな」

「どういう事?」

「いえ……大した問題ではありません。

それよりも、もう少し今後の事について話し合いましょう」


にっこりと、この話はここでおしまいと言うような雰囲気を

醸し出して話を遮ったローダン君を見てルネン君はなにやら

面白いものを見るような表情を浮かべた


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