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5話 困惑

▽ルネン君が仲間になった!


…訳なんですけどこれからどうしよう

一度ローダン君に報告した方がいいかな

並ぶように横を歩いているルネン君に

視線を向けるとどこか眠たそうにゆらゆらとしていた


「おいで」


抱き上げてあげようとルネン君の前でかがむと

物凄く不機嫌そうな顔で睨みつけられた


「不要だ。先程までの無礼一度は許したが二度はない」


突き放すように言い放たれ差し出した

両手で思わず自分を抱きしめる

少しは心を開いてくれていたものだと思っていたけど

どうやら思い違いのようだったまだまだ懐いてくれていない。

折角出会ったのだから仲良くなりたい…

仲良くなるためにはお話をしなくてはこのまま引き下がれない


「わかった。じゃあ少し休憩しない?私も歩き疲れたし」

「……いいだろう」


何か言いたげな素振りは見せたものの了承してくれた。

ルネン君は近くにあった小高い岩の上に上りこちらを見下ろすように腰掛ける。鋭い眼光に少しだけ怯む


「…まず。俺を救出した事には礼を言う。ありがとう

 だがそれは別として本来は我と言葉を交わす事は

 恐れ多いことであり、不敬であることを心得よ」


「……はい」


「まあ、貴様は命の恩人だできる限り質問には答えよう。」


「えあ」


「先程からちらちらと探るようにこちらを見つめられたら

嫌でもわかる。何か聞きたいことがあるのだろう。言え」


質問。質問か…聞きたいことは沢山あるけど順番に行こう


「あのお城にはルネン君の他に誰か居たの?」


「ああ、世界が崩壊する前まではな。」

「我の下僕達や召使、それに妹も居た。あの地が崩壊をはじめた頃、

 民を守る為に城を飛び出して行ったがな。

 ……後先も考えずに愚かなやつだ。

 だが、我に知能と能力こそ劣るが性根の優しく力の強い妹だったよ」


「きっと、ルネンくんと同じように妹さんも逃げ延びてるよ」

「そうだな」


そう言うとどこか悲しそうな表情を浮かべた。

これほどまで広範囲の世界の崩壊だ巻き込まれて消滅してしまっている可能性は

正直高いだろう。でも逃げ延びていたとしたらどこかで助けを求めているかもしれない

きっと急げばまだ間に合う。


「妹さんのお名前は?」

「リーシアだ」


リーシアちゃん。可愛いお名前だ忘れないように頭で反復する


「……他に何か聞きたいことは?」

「他に…ええと、ルネン君は王様だったの?」


「そうだ」

「どんな国だったの?」


「平和な国だった。種族なぞ互いに気にせず共存し手を取り合っていた」

「人間も魔物も?」


「そうだ。我がそうあるべきと従えさせていたからな。

 歯向かうものなど居なかったし誰も彼も等しく我の国民として扱っていた」


成程…ルネン君は凄い王様だったらしい。

このゲームに登場する魔物や人間は常に敵対していたけれど

それを統べて居たということは凄い力を持っているのだろう


「だが、それも長くは続かなかったがな」

「え?」


「始まりは小さな村からだった。

 魔物と人間で小さな諍いが起こってな

 魔物が人を殺め、それを隠すようにあろうことか人間を食った。」


「ええ!?」


「それからはあっという間だ。味をしめた魔物は

 再び人を襲い、他の魔物もそれに習うように人を喰らいはじめた。

 国内に奴らが満足するような栄養価の高い食事が不足していた事も原因していたのだろうな。」

「これには流石に我も辟易した。数を減らすべく魔物達を殺せざるえを得なくなった」


「そ、そうなんだ」

「そうして淘汰したものの、同じ事が起こると考えてな、外に目を向けることにした

「魔物達に餌場を用意してやることにしたのだ。それで我は異界へと空間を繋げ…」


「まった」

「なんだ」


「空間をつなげる。とは」

「言葉のままだが?何を驚く我はこの世界を作り魔物達を生み出した

 この程度造作もない」


「だはぁ……!?」


驚きのあまり情けない声が漏れたルネン君のスペックが凄すぎる

可愛いショタだと思っていたらまさかのラスボス的ポジション。

なんだかとんでもない子を解き放ってしまった気がする


「なんだその声は……」

「驚きすぎて……今でもそれはできるの?」


「今は無理だ。この姿は本来の俺の姿ではない

 魔力の8割を失っているゆえこのように幼体になっている」


「省エネってやつなのか…なるほどね

魔力はどうやったら回復できるの?」


「ある程度であれば眠れば回復するがここまで消耗してしまってはな

 大地や生命から奪い取るしかなかろうよ」


「これは使えない?」


持ち物欄から魔力回復剤を取り出してルネン君に見せると

どうやら初めて見たようで怪訝な顔で見つめていた


「なんだそれは」

「飲めば魔力が回復するよ」


「…………」

「ほら、毒じゃないよ」


警戒しているルネン君を安心させるように飲み干して

見せる。なんだか身体がぽわぽわする


「はい」


再び同じものを取り出してルネン君に差し出すと

それを手に取り口に含み

―――勢いよくはきだした


「がはぁ!!」

「えぇ!!?」


「まずい!!!!!!!!!!」

「嘘!!!!」


味はほぼ無味で癖があるものじゃなかったような


「悪いが飲めたものではない。返す。

魔力も取り戻せた感覚はない」


「あ、じゃあさっき私がした魔力譲渡の魔法を

 ルネン君にかけようか?」


「悪くない提案ではあるが手間がかかりすぎる。それよりも効率のいい方法がある。

 ここから先に強い魔力の反応があるからそこに向かうぞ」


「わかった」

「我が案内する。道すがら貴様にも聞きたい事があるからな答えてもらうぞ」


そう言うと岩から飛び降りさっさと先に進んでしまったルネン君をあわてて追いかける。

こちらに見向きもしてくれない所を見ると全くこちらを信頼していないような…

先の事を考えるとなんだか気が遠くなる気がした


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


ルネン君について色々と考えてみたんだけど

やはりどう考えても何かしらのイベの重要キャラとしか

思えないスペックだ。だとしたら一度出会っている。


サービス開始当初から基本的にイベントは参加しているので

見覚えがあるはずなんだけど、どうにも思い出せない。

もしかしたら初期の時私がまだ実力不足で最後まで進める事ができなかった

イベントに登場した子なんだろうか。

ルネン君はこれが本来の姿ではないとも言っていたし

干渉することによって発動する呪いも気になる。


あぁ…何故あの時もっと真剣にやっていなかったのかが悔やまれる。


そんな事を考えているといつからかこちらを見つめて

立ち止まっていたルネン君と目が合った。

どうしたんだろう険しい顔をしている。あ、いやそれはずっとか

ルネン君はこちらに警戒しているのかあまり笑ってくれない。


「お前は何者だ?」

「え」


「我の存在を知っている素振りがない所を見ると

 我が国の国民ではない…異国の者であることは解る。

 だが我にひたすら無礼を働き、呪いも効かぬお前の事がわからぬ」


「何者と聞かれても…答えようがないと言うか」

「はぐらかすな。答えろ」


また鋭い視線で睨めつけられる。怖すぎる

だからなんでそんな人を殺せる視線を放つことができるんだ


「……元、プレイヤー…?かな」

「プレイヤー?なんだそれは」

「え?いやそれは…」


この世界が私にとってゲームの世界であったことを伝えようとして

思いとどまる。もしかして、ルネン君はローダン君と違い

このゲームの世界と私の居た現実世界の違い、存在を認識していないのだろうか。

NPCのことも分かっていないみたいだったし。

そうだとしたら余計な事を伝えたら混乱させてしまう


「…それは…え~~と種族みたいな。いややっぱり忘れて

 私はただの人間です。職業は魔法剣士。」

「ただの人間が我の呪いを弾いたと?」


眼光に鋭さが増し情けないことに涙目になってしまう

すごい圧。王様ってみんなこうなの?


「呪いについては装備が関係してるかも…しれない…です」

「と言うと?」


「全属性耐性のついた装備を身につけてるので

 その呪いとやらも大丈夫だったんだと。思うよ」


若干震え声になりながらそう答えると

そうか。とルネンは視線を外してくれた。死ぬかと思った精神的に


「そのような物があるとは伝え聞いている。

 だがそうだとしたら貴様は異世界からの来訪者なのだな

 我の世界にそのような物はないのでな」


一人でに納得したようにまたスタスタと先に進んでしまった

…なんだろうお城で出会った時より心の距離が開いた気がする

それどころか話する度に関係性が悪化しているような…?


一度もこちらを振り向いてくれないルネン君の後を着いて

行きながらローダン君はこういう時どうするんだろうと

助けを呼びたい気持ちになった



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