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第2話 ゲームの世界に閉じ込められました

結果、白んだ視界が開けた後も夢から醒めることはなく

目の前からYuraちゃんは居なくなっていた。

というかそもそも広場に誰もいない。

今度はYuraちゃんが回線落ちしたのだろうか…

いや、そもそも周りに誰もいないのがおかしい。

不思議になって別の場所に移動しようとした……が


「え。なにこれ」


広場から出ると景色の大半がごっそりと白紙のように

変貌していた。所々にグラフィックの名残のような

ものと、少しだけ残された元の背景。まるで消しゴムで

大雑把に消したみたいだ。こんな景色は今まで見たこと

がない。バグにしても酷すぎる。

……というか夢にしては鮮明すぎやしないか?


自分の置かれている現状が全く理解出来ず

1度ゲームの機械を取り外そうと頭に手を伸ばす。

が、自分の頭をただわしずかみにしただけで

ゲーム機の感覚がない。


「え」


自らの頭をわしゃわしゃとこねくり回しても

ただ髪が乱れただけで頭に装着した筈の

機械を一向に取り外せない


「まって」


まさかそんなはずは無い。妄想にしては出来すぎている

頭によぎった想像をかき消すように自らの頬を

強めに叩いてみる。夢なら痛くないはず……痛い!


「ぐ、うう。強く叩きすぎた。」


涙目になりながらも自室に駆け込む。

よかったここはグラフィックが乱れてない


「ローダン君!」

「はい。おかえりなさいませ緋衣様」


にこりといつものように微笑むローダン君の

肩を掴み手を握り頭を触り、確かに自分の手で

触れている感覚を確認して一気に血の気が引いた。


「夢じゃない…?」

「はい」

「夢じゃないならこれは何?」

「現実です。貴方は選ばれたのです」


満面の笑みでそう返したローダン君を見て

意識が遠のきそうになった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



1度自分の置かれている状況を整理してみよう。


まず、この世界は荒廃的な世界観を舞台にしたオンラインアクションゲーム「road」

ざっくりと言うと世界に突如沸き出した魔物達に人類は滅亡まで追いやられ

生き残った1握りの人間が仲間と力を合わせて魔物を倒して行くストーリーだ。

とはいってもストーリーは結構おまけ程度でバトルがメインだったりする。

豊富な装備に多彩なアバターやモーション。カスタム性も高くてハマる人は結構ハマる。

職業別能力とかあるんだけどそれは今は置いておこう


そしてストーリーの冒頭で仲間兼サポート役を男の子と女の子から選ぶ事ができる。

それが私にとってのローダン君

基本的に運営さんからのお知らせやログインボーナスの受け取り、装備の強化をしたり…で、直接連れ回したり出来るわけではない。昔はサポートキャラを戦場に連れて行けたけどゲーム内人口が増えてからバグも増えだしてそれっきり連れて行けなくなってしまった。


で、広場は他のプレイヤーと交流ができる場所でそこからショップとか戦場とかシナリオモードとかに

飛ぶことができる。ゲーム内での会話は基本チャットで戦場だと文字打つの面倒で親しい人とはボイチャだった。Yura

ちゃんはマイクないからってチャットで打ってたけど。


……で、問題はここからだ。ゲームの内容は思い出せても自分の現状がまっったく把握出来ない。

これはゲームの筈なのにしっかりと感覚があるし自由に身体が動かせる。そもそも……


「ローダン君質問してもいい?」

「はいどうぞ」

「選ばれたってどういう事?ていうかどうなってるの?」

「それは…。少し話が長くなってしまいますが…」

「教えて」


わかりました。と姿勢を整えて真面目な顔を

したローダン君はゆっくりと話をしてくれた


「この世界はつい先程終わりを迎えました。

 これから先は消えていくのみ、新たな物語は生み出されません。

 貴方からしたらこの世界はただのゲーム。

 …ですがこの世界に存在する我々からすればここが唯一の世界なのです」


「我々も消えたくはありません。なので考えました。

 どうすればこの世界を存続させることができるのか」

「皆で考えて、一つのアイテムを作成しました。

 緋衣様、アイテム欄を開いて頂けますか?」


「アイテム欄?」

「はい。見慣れない物が入っている筈です。」


促されて確認してみると確かに見慣れないアイテムが

所持欄に表示されていた。なんだろうこれ

指輪にしては大きいしネックレス?にしては小さすぎる


「緋衣様が最後に倒した敵が落としたものです見た目は特に重要ではありません。

 重要なのはそれを貴方が手にしていると言う事です。」

「はぁ…」

「それには膨大な魔力が詰まっています

 具体的に言うと異次元の世界から物体を一つ引っ張れる程です」

「すごい…の?いまいちわからないんだけど」

「凄い事ですよ。それで緋衣様の精神をこの世界に留める事が

 できているのですから」


なんだか難しい話になってきた気がする

脳のキャパをオーバしそうになってきた


「つまり?」

「あぁ、すみません少し脱線しましたね。

 この世界を存続する為には我々のようなNPC、作られた存在ではなく

 自らの意思を持ち存在するプレイヤーである貴女方が必要なのです。」


「その為、プレイヤーにここに留まっていただく必要があった。

 しかし皆さんをここに留めるだけの膨大な魔力など保有していない…

 ので、選別したのです。」

「成程…?このレアアイテムを持っている人だけここにいるって事?」

「はい。この世界が終わる数刻前、様々な場所から魔力を引っ張り

 それを作り上げてランダムで数名に配布しました。そしてこの世界に貴女方を留めたのです。」

「え~っと。理屈はわかんないけどなんとなくわかった。」


「ざっくり言うと、私はこの世界を存続させる為につなぎ止められてしまった訳ね」

「……はい」

「なるほどね。なるほど」


「…………一回寝ていい?」

「はい?」



正直に言うと完全にキャパオーバしている

ゲームとか二次元の話ならそうなんだ~と理解ができるが

これは自分の身に起こっていることで自分が二次元の住人に

なってしまったということで…


「ちょっとだけ休憩」


ばたりと倒れこむようにベッドに横になる

だいぶカスタムしただけあって自室は結構豪華でリアルの私の部屋のように散らかっていない

ベッドもこんなにふわふわ…

うとうととまどろみかけていると視界の隅で「風邪をひきますよ」と

毛布を持ってきてくれているローダン君の姿が見えた


終わるかと思っていた私の人生を捧げたこのゲーム。

まさかそこで第二の人生を歩むことになるとは思いもしなかったな。


この日私はそんな事を考えながら何とも言えない不思議な気持ちで眠りについた


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