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村娘が開拓してもいいじゃない!  作者: 紀伊国屋虎辰
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開拓村へようこそ!1

「ちょっと、何……この人の数。どうしよう。お義父(とう)さん」


 作成した名簿をペラペラとめくりながら、村というには余りにも多い人の数にフィオナは呆然とする。

ゴート族の村と、元辺境の村である笹ヶ原の村を併せた人数は実に900人以上。

しかも護衛や建設作業のために雇った傭兵達が300人。

人口200人の雪割り谷の5倍近く、総勢1000人を超えると、それは既に村ではなく町である。


 先行部隊が【祈念石】を設置して、気象が安定するまで3日。それを7回も繰り返してやって来た辺境最深部は、赤茶けた土と僅かばかりの樹木に覆われた不毛の大地。

 結界石が機能し始めれば7日ほどで草木が芽生え始めるが、それでも1200人が暮らすには、余りにも資源は少なすぎる。二ヶ月は持つと見込んだ食料も一月で無くなってしまう。

つまり後一週間分の食料しか残されていないことになる。


「いやぁ、多いとは聞いておりましたが、ここまでとは」


 岩のような表皮を伝う汗を、娘であるゾエに拭いてもらいながらミダスが帳簿を眺めている。


「500を超えるとは聞いていたが、思った以上に多かったな。ミダス、追加の食料の手配は?」


「それは商会の方から手配して確保してあります。二週に一度の定期輸送を一週に一度にします。しばらくは空の馬車を帰さなければならぬでしょうが、致し方ないでしょう」


 即座に食料が尽きることは避けられそうだが、悪天候などが続けばすぐに干上がってしまいそうだ。


「それで頼む。フィオナ、世界辞典(マグナ・コスモス)の中に、グレン叔父さんの植物図鑑があるはずだ。そこから救荒植物の中で、すぐに準備できそうな物を調べておいてくれ」


「はい。わかりました。水場の確保はお義母(かあ)さんが何とかしてくれそうです」


 予想通り、人魚族(ネレイデス)の血のお陰か、隠れていた水脈はアッサリと見つかった。

国土の大部分が群島にあるミケーネでは、新しい島に移住する際には必ず人魚族(ネレイデス)を連れて行けと古くから語られている。水の魔法と親和性が高い彼女らが魔法を使うためには水の存在が不可欠で、わずかな水でも感知できる能力を持っている。


「そうか、井戸が掘れるなら他の地下水脈との繋がりを気にかけてくれ、鉱毒が混じれば我が紋章旗なしでは生活できなくなってしまう」


 帝国貴族が持つ紋章旗。その中でもあらゆる毒と不治でない病を取り除くライアン家の紋章旗があれば鉱毒すら無効化できるがそれでは意味がない。半年後には代官であるクレイグではなく村人たちだけで、村を運営しなければならないのだ。


「クレイグ、私はどうすれば?」


「傭兵には、全員村の建設を手伝って欲しかったが、少なくとも数十人は狩りに回さないといけないかもしれん、その人選はシニスに一任する」


「それなら狩りの人員は俺達ゴートと、あちらの村から半分づつ出そう。我々なら土地勘もあるし、お互いを知るにはいい機会になるだろう」


 普段の執事服ではなく皮のズボンにチョッキという騎士の姿で、テオドリックは提案する。

それに頷くとクレイグはミダスに材木の追加調達を指示する。このあたりはさすがに長年領主を務めているだけあって手慣れている。雪割り谷からの移動中に色々と教わっていたが、ここまでの冷静さで事態に対処するだけの力は、まだフィオナには無い。


「男爵様、有角族(タイタン)鍛冶匠(かじたくみ)、クリュティオス・オレイカルコス殿をお連れしました」


「鉱山の試掘の件で話をしたい。クリュティオス殿」


 フィオナの弟子であるメディアに伴われてやってきたのは、左右の瞳の色が違うがっしりとした体格の男、人間族(ヘレネス)よりはやや背が低く恰幅がよく額の中心と左右の三本の角が生えている。

これが龍と火山の国、エトナからやってきた有角族(タイタン)だ。普段は人間の肩口ほどの背丈しかないが、その気になれば周囲の岩石を外殻としてまとう身の丈6ペーキュス(約3メートル)を超える巨人になることもできる。建築や鍛冶に優れたものが多く、各地の建築現場ではその巨体を生かして生活している。今回招かれたクリュティオスは、主に宝石の加工を得意とし、鉱山についても深い知識を持つ。


「うむ。話は聞いておる。この辺りでは宝石が良くとれるが、鉄や銅の鉱脈もありそうじゃの。そこのうちらの親戚は宝石を自由に生み出せるんじゃろ?」


「いやはや、魔力を消耗するので自由という訳にはいきませんが、一応は」


 親戚というのは、ミダスのことである。有角人の変異体であると見られている彼は確かに親戚ではあるがミダスの表皮だけでなく全身が石化する病に冒されている。

ライアン家の紋章でも治癒しなかったため彼の持つ魔人族(アトラス)の能力に起因するものと考えられる。


「それでも屑石でも宝石に変えられるなら大したものだ。もしかしたらお主宝石眼(キュクロプス)の血を引いておるかもしれぬな」


「いやいや、とんでもございません。そのようなことなど……」


 有角族は上位のものほど片目に宝石の色を宿すものが多く、特に鍛冶や魔法に優れたものは生まれつき片眼が宝石の目を持つ。そのため一つ目の意味で『キュクロプス』と呼ばれている。有角族(タイタン)の中でも高貴な生まれを持つものだけがそのように産まれてくるといわれていて、捨て子であったミダスからすれば想像もつかないことだった。


「ゴートの人たちもいますから、ここで宝石細工を作って貿易ができればいいのですが、どれくらい期間が必要になるでしょう?」


 フィオナは普通の人間族(ヘレネス)より器用なゴート族による宝石細工を交易の要にしようと考えている。辺境の村といえば酪農が主な産業だが、それではいつまでたっても都市のような豊かさを手に入れることはできない。魔精霊(ダイモーン)を浄化し帝国を拡大していくためには、辺境の発展は不可欠だった。

今回から本格的に新種族である有角族のタイタンが登場します。この種族はドワーフと鬼をモチーフとした種族で、通常形態と戦闘形態二つの姿を持ちます。戦闘形態ではタイタンの名に恥じぬ巨人となりますが、普段は酒好き祭り好きの陽気な連中です。次回、開拓村後編、その後は帝都へと物語の舞台は移ります。

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