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薬物汚染の時代ー「麻薬脱出」

書評「麻薬脱出」 軍司貞則著 小学館 2001.3.20初版


 副題に「250万人依存者の生と死の闘い」とあるが、薬物依存者がこれほど多いとは正直知らなかった。薬物依存者の問題については、夜回り先生こと水谷修氏が著作や講演でその重大さを訴えているが、社会的認知は低い。

 薬物依存といえば覚せい剤・シンナーなどを思い浮かべるが、市販の頭痛薬を一気に100錠飲んだりする依存者もいることも、この本で知った。

 この本は、薬物依存者の赤裸々なルポであるが、想像を絶する凄まじさだ。薬物を手に入れるために、彼らは人間関係も資産も仕事も、これまで築き上げたものを全て崩壊させる。薬物を使用することのみが、唯一の価値となり、それを手に入れるためには、平気で嘘をつき金を騙し取り、家族や友人に迷惑をかけようがおかまいなしだ。一般常識というものが、吹き飛んでしまう。

 薬物依存は病気であり、病気であるならば当然それに対応する治療も必要となる。治療のための民間施設として、「ダルク」といものが徐々に設立されている。このダルクを立ち上げたのが近藤恒夫氏だが、彼も覚せい剤の中毒者だった。

 近藤氏の話によると、「薬物依存者のうち、刑務所に約2万人、精神病院に千五百人、全国のダルクに150人しか入っていない」「ダルクを開設して15年、約3万人が門をくぐり、回復した人は3割、1割は死亡、3割は行方不明、残りは精神病院か刑務所」という、なんともすごい数字である。この数字自体、数年前だが、薬物依存者に対する施策が画期的に変わったという話はきかないので、現状もそれほど変わっていないと予想される。

 格差社会と呼ばれ、日本の社会の底辺で苦しんでいる人が増大しているが、その中でも薬物依存者は最も忘れられた存在ではないのか?

 自身もアルコール依存者で近藤氏を救済したロイ神父は、僕らにメッセージを送っている。「神様、私にお与え下さい。自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを、変えられるものは、変えてゆく勇気を。そして、二つのものを見分ける賢さを」と。


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