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茶色いノート  作者: ふりまじん
100年戦争
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ジャンヌダルク考少女期8

夜の森を騎士の一団が静かに進む。

騎士と称しても軽装で、甲冑などは身に付けてはいない。

重量のある甲冑を戦闘前から身に付けていては、馬も人も体力がとられるし、 今回は、鉄の甲冑より、革の防具の方が身軽で、敵を仕留めやすいに違いない。


ブルゴーニュ公ジャン一世に使える老騎士シメオンは目的地につく少し前に道の外れの空き地で止めて戦支度を始める。


今回は、脱走兵や彼らをそそのかした山賊討伐を目的としているので、戦と言うより捕物の方が言葉的にはあっているかもしれない。


彼は、無言でテキパキと支度を始める部下を軽く見回し、問題がない事を判断すると、自分に歩いてついてきた騎士見習いの少年に視線を落とした。


年の頃は、15、16才位か、その年頃にしては長身で、細身の少年である。


彼は、修道師が着る粗末だが、丈夫な黒いフードで身を包み、几帳面な立ち姿でそこにいた。


シメオンは、フードもとらずに立っている少年のもとへと近づき、

そして、困ったように肩をすくめると、その被り物をはずした。


「フィリップ様ここで待機されますか?」


シメオンの囁くような言葉に、フィリップと呼ばれた少年は、無言で答えた。

これから、王領の小さな村が野党どもに襲われる。

彼は、それを自分の手で止めたいと願っていた。


月の無い闇夜の中で、幕に光を漏らさぬように、わずかばかりの灯りに、切実なその表情がおぼろげに浮かぶ。


色白の肌、神経質そうな形のよい眉、

そして、父親譲りの尖った鼻。

薄い唇をキリリと結び、信念のこもった瞳が、少年の決心をシメオンに訴えかける。


気の優しい、詩人のような少年だと思っていたが、どうして、どうして、

こうして、私を見つめる姿は、無怖公(むふこう)と呼ばれた父上にそっくりではないか!


シメオンは、少し嬉しくなりながら、顔にはそれを出さずに静かに少年を見つめながらこう言った。


「よろしい。それでは、ここからは、あなたは騎士見習いのフィリップ。

私の命に従えなければ、体を鞭で叩き、

必要とあれば、お命を頂く事になります。

よろしいですね?」


その枯れたように、まつわりつく響かない声を聞きながら、フィリップはこれから、向かう戦場を思って胸を高ならせた。


シメオンは、暗がりでもなお、輝きを失うことの無い少年の好奇の光に戸惑いながらも、それを戒めるどころか、共有したいと考える自分にあきれてしまう。


仕上がる戦仕度に、シメオンの心も高なった。


己の少年時代の…

初陣の時めきが、老兵の体に若さを取り戻させる。


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