ジャンヌダルクと魔女
さて、ジャンヌダルクの話になると、大概悪役にされるイングランド人。
私だってワリとイングランドを悪者にしていた。
が、それもなんだか気が引けるので、今回はジャンヌダルクと魔女について書いてみる。
ぶっちゃけ、19才の清純な少女騎士と、海からくる荒くれのイングランド兵。 どちらの味方をしたいと言えば、少女騎士になるのは人情だ。
だって、悪い要素が探せない。
誰だって、可愛い少女の味方の方が楽しいに違いない。が、これが、アクション小説の戦国無双もので、 苦労の末に敵地に上陸し、先祖の土地を取り返して、やっと国を平定させる物語だとしたらどうだろう?
話も佳境、あと少しで先祖の土地と平和を手に入れようと主人公がしたところで、作者が19才の美少女騎士を登場させて負け組に奇跡をおこしたら?
みんなが皆、少女の登場を喜びはしないのでは無いだろうか?
何十年もの長い間の戦いの歴史である。
読者だって、何年も文庫本を買い、長い間、主人公とその仲間を応援するのだ。
小さかった主人公は大きくなり恋をして、戦いの中友人を亡くしたりしているかもしれない。
勿論、読者だって成長し、物語に少年時代を懐かしく思い返すのだ。
イングランドは、元々はノルマンディ辺りに先祖がいて、フランス王家とも縁がある。
別に異世界からやって来た侵略者ではない。
イングランドを応援して読んでいた読者からすれば、いきなりチート美少女登場なんて納得できるはずはない。
小説なら感想欄が荒れるに違いない。
その上、理由が神のお告げと聞いたら。小説の読者も、100年戦争のイングランドと共闘したブルゴーニュ家のフィリップもブチキレたくなるだろう。
ジャンヌダルクの推しメンのシャルル7世は、1419年の和平の席で味方を管理できずにブルゴーニュ公ジャン1世、つまり、フィリップの父をむざむざ殺させているんだから。
ジャンヌダルクの言うところの神の選んだシャルルの母親は、フィリップの父、殺されたジャン1世の庇護にいたけれど、男女関係のスキャンダルが絶えない女性だ。
この母親の息子で、まともに和平の席すら管理できない、こんな男に乱れたフランスをまとめることなんて出来ないだろうと、フィリップが腹を立てても仕方ない。
ましてや、神がコイツを選ぶなんて、チャンチャラおかしい。
私だったら絶対に許さない。
第一、本当に神がいると言うのならば、ジャンヌダルクなんて田舎娘を登場させる前に、和平がうまく行くようにして、父ジャン1世を助けてくれればよかったはずだ。
だって、キリスト教の神様はモーゼの為には海すら割ったのだ。
神がいるなら、そして、この戦争に介入するなら、父ジャン1世を生かしてくれてもよかったはずだ。
そうでないとしたら、
ジャンヌダルクが聖女だと言うのならば、
教会はフィリップの、ブルゴーニュとイングランドの神ではない。
くらいの勢いでフィリップは文句を言いたくなるはずだ。
で、ジャンヌダルクが聖女でないとしたら、もう、人心を惑わす悪女でしかない。
まあ、どちらにしても、ジャンヌダルクが戦略家で無いのは確かだと思う。
「神の名の元にお前達は敵だ。フランスに勝利を!」
なんて、もともと仲間だったイングランドとブルゴーニュ派の人に言ってしまったら、弾かれた方は反発するしかない。
そして、彼らは教会にだって文句を言うはずだ。
苦情を言われた教会は、こっちも慌てふためいたに違いない。
一人の少女の妄言のために、豊かなブルゴーニュと羊毛を扱うイングランドが離れて行くような事になれば、大変な損害だし、このてのトリックスターを一人認めてしまえば、後々、どんな災いをもたらすか。
20世紀ですら、自称キリストの生まれ変わりなんて人間が事件をおこすのだから、信じやすい中世の世の中で、自称ジャンヌダルクが増殖したらたまらない。(実際に登場したらしい。)
だから、ジャンヌダルクを捕まえたとき、躍起になって、異端のレッテルを探したに違いない。
ジャンヌダルクは魔女なのか?
真実は私にも分からないけれど、少し探してみる。