作者、ジャンヌダルクを語る3
さて、次は、聖女ジャンヌではなく、
魔女ジャンヌについて詰めてゆく。
しかし、なんだか、おかしな方向に物語は流れてきた。
去年、始めたときは、この話がこんなに面倒になるなんて考えても無かったし、
ジャンヌダルクの物語や、100年戦争がこんなに興味深いなんて考えもしなかった。
一番は、クラーメルかもしれない。
神経質で、嫌みな感じのこの人に共感できる部分を見つけて、物語は深みをました気がする。
ジャンヌダルクが生まれた1412年。彼はまだ生まれてもいないけれど、魔女の概念はすでに、遥かローマ時代まで遡って人々に影響をもたらせていた。
魔女とは何か?
基本、その概念はこの時には決まってなかったのだと思う。
ルネサンスの時代を経てもなお、科学と魔術は一緒の概念の中で混在しているし、
魔女。の概念も多さっぱなのだと思う。
良いところでは、出産を手伝う産婆さん。
悪いところでは、男を誘惑し、村や町の風紀を乱す娼婦や流れ者。
そうして、シンデレラなどの童話に登場するような、強いたげられた下層の人間を不思議な力で幸せにしてくれる、そんな人物もまた、魔女と言われたのだと思う。
おとぎ話の中でも、魔女は悪い権力者と闘うシーンが描かれる。
しかし、下層の人たちの悪い権力者とは誰か?
貴族の側から言えばまた違うと思う。
テンプル騎士団の信じた神が、フィリップ四世にはバフォメットと言う悪魔に見えたように、立場によって、見え方が違うものなのかもしれない。
混乱時では聖女に見えたジャンヌダルクもまた、
政治的に戦争を終結するにあたって、貴族社会から魔女として煙たく感じる存在になって行くのかもしれない。
しかし、まだ、1412年について語らなければならない。
この年、私の物語ではレクスは15才。
仮の結婚を済ませて、イスラエルに向けて奇蹟の水を探しに行こうとしている。
妻になった少女は、原因不明の病気で、長く持ちそうも無いから。
レクスの弟は、シチリアで勉強をし、医師としての腕を磨くため、そして、騎士団の従士となるために島を出て、大学に進学することになる。
旅立つ兄に頼まれて、可憐な義姉の様子を見ながら。
うーむ。この設定だと、兄弟が一人の少女に思いを寄せて混乱する方が面白そうだけれど、まあ、弟は秀長がモデルなので、兄レクスに刃を向けたりはしない。
まあ、でも、好意はあるんだろうなぁ。
随分と淡くて、無自覚な。
ああ、レクスの話の方がノストラダムスより気なる。が、ノストラダムスが終わらなきゃ、何も始められない。
レクスに、奇蹟の水の話をしたのは誰なのか?
それはわからないけれど、この時代、密かに時代が代わり始めていたのは確かだと思う。
この100年前、解散させられたテンプル騎士団が守った宝物は、金銀財宝だけではない。
その中には扱いに注意が必要なものもあったと思う。
それは、古代から伝わる本だったり、
古代の遺物だったり。
何か、珍しい植物の種だったりするかもしれない。
それらが、100年の時を経て、物の本質を忘れられ、扱いが雑になったり、売られてしまったとしたら?
長い眠りから目覚めたモレーの霊は、パリの空を見つめていた。
それは、かつて騎士団総長として見た最期の空を思い出させた。
破門されたギョームと違い、彼は望んで天国の扉の向こうには行かなかった。
ただ、目覚めるには少しばかり早い気もする。
終末、最期の審判まではまだまだ遠い。
何が自分の眠りを覚ましたのか?
モレーは嫌な予感を胸にパリの憂鬱な青空を見つめていた。




