作者、ジャンヌダルクを語る2
しかし、そろそろ一年。終わるどころか、本編から100年前の話をぐだぐた書くはめになるなんて。
ノストラダムスの話をするはずが、現在、ジャンヌダルクを語る私。
しかし、調べるほどに興味深い。
1412年。テンプル騎士団が、ヴイエンヌ公会議で正式にテンプル騎士団の禁止が決定した年から100年たったその年に、ジャンヌダルクは、フランスの小さな村に生まれたのだ。
1300年代、豊かなフランドルの土地を争い、イギリスとフランスは戦った。
時の王フィリップ4世のユダヤ人とテンプル騎士団への暴挙の動機は、その戦費の借金と言う人もいる。
歴史は巡り、約100年、フランスは再び、イングランドと戦う事になる。
それは呪いのように、フランスを疲弊させて行った。
パリの片隅で、一人の男の亡霊が後悔と懺悔を唱えながら、あてもなくさ迷い歩いている。
彼の名前は、ギヨーム・ド・ノガレ。
フィリップ4世の政治顧問で、一連のフィリップ4世の政策に関与し、法王を憤死させ、後任のベネディクトゥス11世に破門された男だ。
彼の没後99年が過ぎていた。
しかし、どれだけの時を懺悔に費やしたところで、彼の前に天国への扉が開くことはない。
それほど彼は罪深い。
言葉も忘れ、名前も忘れ、何も見ることなく、ギヨームはブツブツと意味不明な独り言を呟く黒い影に成り下がっていた。
しかし、ノートルダム大聖堂を通りかかった時に、一人の男を認識して、己の姿を思い出した。
その男から、かつて自分がまとっていた臭いがした。
傲慢と言う罪の臭いだ。
彼の名前はピエール・コーション。
1412年、この年に生まれた聖女に天国で告発される男。
ギヨーム・ド・ノガレは、その男に自分を見つけ、忠告をしようと近づくが、それを教会の魔除け達が止める。
そう、彼の出番は終わったのだ。
ピエールの物語に加わることはない。
来年、1413年、村人を先導する悪巧みも、ルイ・ド・ヴァロアの暗殺を正当化する手伝いをすることも。
シャルル7世の王位継承権を否定することも。
ジャンヌダルクを異端として弾劾することも。
ギヨーム・ド・ノガレは、静かにこの男が、ブルゴーニュ公ジャン1世に必死に媚を売る姿を懐かしく見つめていた。
かつて、自分がフィリップ4世にしたように、ピエール・コーションも天国の存在を信じずに、善意と誠実さを時の権力者に売り渡し、飾られた彫刻のすみで見つめる天使に気づけずにいる。
彼の出番は、もう。
次の瞬間、ギューム・ド・ノガレは風の中に、もうひとつの懐かしい匂いを感じた。
それは、彼が死んだ翌年に、生きたまま火炙りにされたモレーの匂いだった。
って、なんか、出だしから面倒な奴に絡まれたなぁ。
しかし、掘りたくなくても、なんか見つけてしまう。
この人も、また、話に加わるんだろうか…。