蘭子、ジャンヌダルクを語る2
『プロバンスの赤いしずく』は、気になるが、とりあえず、蘭子の茶色いノートについて聞き出すのが先だ。
蘭子が、ジョームを取り込んで本編終了辺りからの話と、スピンオフのような話を茶色いノートに書き込むようなので、私が本編の『プロバンスの赤いしずく』を考える事にする。
これで、面倒ではあるが、「ノストラダムスを知ってるかい?」を動かす目処が見つかった(;_;)
ああっ。死にそうだ。
死なないけど。
この時点で、一万文字未満の短編ガイド小説の予定が、ノートルダム三代記になって行く…。
もう、なんか、みんな諦めた。
やってやろうじゃない。
ノートルダムの三代記。
終わりは見えないが、やめるときは死ぬときだ。
さて、始めるか。
まあ、色々あって、蘭子さんは森で酒を飲みながら、私を捕まえて話を聞かせてくれる。
習作してみて分かったが、この人は霊能者のような力がある。
日本ではミコ(主に東北にいた霊能者で女性。)
西洋では魔女と言われた部類の人間のようだ。
で、怪しい儀式をしてくれていて、
焚き火をたき、
大地に座り、
ワインの香りを楽しみ、
飲む。
の、火、地、風、水のエレメントをその場に集めて何やら術を施した設定だ、現在の場をしっかりと固めている為に、悪魔か神の役にされた私、作者も物語の世界から逃げられずにいる。ビックリするが、ルターの話では、瀬謙家は、昔からの大工で、祖母がそれらしい能力があるので、そこからの流れなのだろう。人の頭と言うのは、面白い発想をするもんだ。
混乱はするが、神の目線で世界を見るなんて、なかなか出来ないので付き合うことにする。
蘭子は、正確に私を認識しているわけでも無さそうだが、あながち間違いでもない。
ワインの酔いに身をまかせながら、トランス状態で物語の設定できるんだから、なんだか羨ましいキャラクターである。
『テンプル騎士団をいれてお話を作るのよね?で、騎士団残党が分裂する話になわけだから、西と東に騎士団を分けてみましょう。』
蘭子は楽しそうに話を広げて行く。
『テンプル騎士団が後の秘密結社になる話が沢山あるし、ここは、イングランド系のフリーメンソンとドイツの薔薇十字でバトルなんて、どうかしら?』
蘭子は頭のなかで私に話しかけてきた。
却下!
勿論、却下です。フリーメンソンは、実在する組織名だし、薔薇十字については、一度本を読んだけど良く分からないし、多分、薔薇十字は、ノストラダムスよりずっと後にブレイクした記憶がある。
『あら?つれないわね。』
蘭子は不服そうだが、そんなことは私には知ったことではない。20世紀末、オカルト本を華々しく彩った秘密結社も、現在では平穏に暮らしているのだから、野暮はやめよう。
『じゃ、Dの血族と海にでもでちゃう?』
蘭子は楽しそうに目を閉じる。
それは、海賊王を目指しそうで怖いなぁ。
それとも、90年代なら吸血鬼か…。
強烈なキャラクターが既に登場している設定は、私のような弱小作家の話の印象を飲み込んでしまうからダメだよ。
しかし、あの海賊王のアニメ、90年代には既に放送開始されていたんだよね…
ちょっと、歴史を感じるわ。
『ダ・ヴィンチの謎に迫るのはどう?』
蘭子は本命の話を持ちかけるように、急に真顔になる。
ダ・ヴィンチ…。「偽コード…」でお世話になった、ダン・ブラウン先生の「ダ・ヴィンチ・コード」。このお話では、イギリスに逃げたテンプル騎士団が、ダ・ヴィンチの秘密をイギリスにもって行くのよね?
まあ、延々と話を書かせてもらって馴染みもあるし、本編に繋げやすいから、ちょっとそそられるけれど、蘭子の時代からだと「ダ・ヴィンチ・コード」は難しい。
なぜなら、ダン・ブラウン先生の「ダ・ヴィンチ・コード」は、2003年アメリカ合衆国で出版されたのだ。
1995年、蘭子の茶色いノートに書かれるのはおかしいし、さすがに、本家より早くこの物語を作るのも忍びない。
と、ここで、調べていたら面白い事を知った。
ダ・ヴィンチ・コードにも登場する、シオン修道会、1617年にイエズス会に最後の会員が入会し、消滅しているらしい。
1217年には、教会がイスラム教徒のエルサレム奪回の際に壊されてるらしい。なんか知らないけれど、17年盛りでエピソードが作れる感じがする。
1217年、イスラム教徒のエルサレム奪回で追われたシオン修道会の人たちは、シチリア島に退くらしいけど、シチリア!ラグーザ兵。
なんか知らんが、適当に使ったラグーザ兵の男を何とかすると、私の話のジャンと繋がりそうだぞ、シオン修道会。
でも、ダ・ヴィンチとは関係なんだけどね。この組織。
なんて、色々ネットで調べていたら、カソリックの方らしい人の書いた記事を見つけた。
「ダ・ヴィンチ・コード」の矛盾について書かれた記事で、それを見ていたら、私の話もカソリックに対して批判的な内容になっている事に気がついた。
この辺り、バランスが悪いと物語全体を批判されてしまうのだ。
書ききる前に気がついて良かった。
私には祓魔師のカルロがいる。彼は、勿論、カソリックのお坊さんだ。
ルネッサンスのカソリックを見ていると、批判的な話になりがちだが、その時代、頑張っていらした神父様もいるはずだから、退廃する生臭坊主の文句ばかりではなく、カルロと共に弱者に寄り添う教会についても入れ込む余地を作ろう。
しかし、歴史物は実在する人達にも影響があるから、色々考えて配慮が必要なんだね。
まあ、基本、典型的な日本人だから、キリスト教なんて完璧に理解できるわけもなく、それが目的でもないから(普通に大衆娯楽小説を書いてとっとと終わりたい。)、大雑把にだけど逃げ道を作る。
と、つい、色々考えたが、ともかくだ、1617年にシオン修道会が無くなるので、その100年前、1517年に何かをおこそう。
出番待ちだったガブリエルを叩き起こして…って。
「もし、もし、寝てしまいましたか?」
ふいにジャンが蘭子の肩に手をかけ、私は驚いてそちらを見たが、蘭子は眠ってしまったようだ。
ジャンはその様子を確認し、自分の持っていた羊毛のストールを静かに蘭子にかけて立ち上がった。
そうだ、まずは、中世。
新しい知識を受けて、ジャンの話も動き出す。