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茶色いノート  作者: ふりまじん
100年戦争
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蘭子、ジャンヌダルクを語る

閲覧数は下がってきたけど、書いてる作家(わたし)は、テンション上がりぎみである。


ここに来て、いささか強引ではあるが、テンプル騎士団の登場人物(>_<。)くうっ。


いやぁ、夏に熱で浮かされながら読んだ本や、古本たち、そして、茶色いノートの無駄知識が、ここに来て物語を作り出して行く。

それを感じるのは楽しいけど、これ、設定ノートの習作なんだよね。


ああ、ジャンヌダルク、マトモに書きてー!


と、盛り上がりたくなるが、そんな事はしてる暇がないから、ちゃっちゃと書かないと。


とりあえず、ここで、投獄されジャンヌダルクの行動を再確認しなくては!


と、言うことで、蘭子さんにお願いしよう。




焚き火の前でジャンが悶々としているとき、蘭子はジャンヌダルクの考察をするためにガラケーを取り出した。

蘭子が生きていた90年代、携帯電話はガラケーだった。


ダブレットを持たせようかと考えたが、ここは使い勝手の良さそうな棒型の携帯電話でメール機能を使って投稿してもらうことにした。


『ジャンヌダルクの投獄からの話で本当にいいのかしら?』

蘭子は挑戦的に作者(わたし)に微笑みかける。

『折角、テンプル騎士団が登場したことだし、騎士団の内紛を混ぜて、もう一度ジャンヌダルクについて語ってみるのはどうかしら?』

蘭子は魅力的な提案をしてきた。


確かに、それは聞いてみたいところだ。


蘭子は、ワインの酔いに頬を染めて、見えない作者(わたし)を甘く目を細めて見つめていた。


その姿は、神と話す巫女のようであり、ただの酔っ払いにも見えた。


が、どちらにしても、彼女の笑顔は魅力的で、理知的で太目の形の良い眉毛と、ビビット・レッドの唇がバブル時代の闘う女性を思い起こさせた。蘭子は語る。


疑問の残る終わり方をした物語の続き。


それは、どんなに長い年月を重ねても忘れる事はないわ。


とくに、子供時代に読んで、大好きな人と共有した世界ならなおさら。


私にとって…、それは、なっちゃんにもなのだけれど、『プロバンスの赤いしずく』だった。


謎のある話には、大きく二つの分類ができる。


作者が続きを書いてくれる希望があるもの。


二度と続きが期待できないもの。


『プロバンスの赤いしずく』は、後者の分類にあたっていたわ。


だって、作者は死んでしまったのだもの。


正確には原作者、ね。


少女漫画の歴史は、それほど長くはないわ。

wikipediaによると、1930年代には既に少女漫画が存在していたみたいだけれど、1960年代、漫画雑誌が週刊紙化した辺りからの作品が、私には馴染みがあるわ。


当時は、年配の男性の作家先生も沢山投稿していて、『プロバンスの赤いしずく』も、原作者は年配男性だったのよ。


原作者は、坂本先生と言って、穏やかな学者風な先生で、プラトンとビクトルユーゴーがお好きな方だったと記憶してるわ(また、面倒くさい設定を…)。

70、80年代にかけて、少女漫画の男性作家は減少し、坂本先生の作品を読む機会も減ってしまったのだけど、『プロバンスの赤いしずく』は、根強いファンが支えていたお陰で、長期連載をされ、坂本先生が連載途中で亡くなられて(65才だったから仕方ない。)、中途半端な終わり方をしてしまったのよ。


当時は、作画の先生と物語を続けようとしたようだけれど、違和感があって、結局、連載は終了したわ。

まあ、それでも、普通は素人が続きのお話なんて作ろうとはしないのだけれど。

1995年、ボージョレ・ヌーボーの当たり年と言われたあの年に、関西で大きな地震があって、続いておこった都内の地下鉄の同時多発テロは、小さな子供たちの心にも暗い影を落としたわ。


夏場の楽しみだった、オカルト特番を見て、小さななっちゃんが夜泣きをしながらわたしの布団に潜り込んできて(奈美にもそんな可愛い頃があったんだ。)、それを慰めながら、私は、この物語の続きを作ることを約束したの。


人類の滅亡の話に、世界が終わる事を怖がっていたから、誰かが終わらせたなら、自分がまた作り出せばいいって、勇気づけたのよ。


でも、さすがに、プロの編集者の方もつなげなかった物語の続きは難解だった。

坂本先生は、もともと大学の先生で博学でいらしたから、西洋史の基本知識から勉強しなくてはいけなくて(わかります(;_;))。

なかなか、文章化は出来なかったのよ。


それでも、ヨーロッパの美しい写真のついた本や、歴史の話を調べるのは楽しかったし、そのうち、なっちゃんは、私と物語の設定を考えるのに夢中になっていたわ。


私は、世紀末を怖がるなっちゃんの為にノストラダムスと闘わなきゃいけなくて、だから、『プロバンスの赤いしずく』と年代が合う父のジョーム・ノートルダムを登場させることにしたの。


なっちゃんの未来の為に、21世紀に続く「諸世紀」の真実と言う名の架空の物語をあの子の心に残したかったのよ。


それで、色々調べていたら、テンプル騎士団とジャンヌダルクを見つけたんだわ。


まずはそこから、話を進める事にしたわ。


私の茶色いノートのはじめはここからよ。



蘭子の語りを聞きながら、私は悶絶する。


そんな事を聞かされて、私がエタれるわけないじゃん!


と。はぁ…。なんだかなぁ。この話、キャラクターが凄く濃い。


しかし、1995年、ボージョレヌーボから引っ張り出したこの年が、あんな激動の年だったなんて、忘れてしまっていた。私は、その時、何してたんだろう?


しかし、こんな話、終わる気がしない。


で、ルネッサンスの話を作る予定なのに、なんだか、現代劇も活性化してくるんだよね…


それにしても、『プロバンスの赤いしずく』って、どんな話なんだろう?


気になる。


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