ブルゴーニュとワイン
「このワイン…軽い。」
ジャンはさっぱりとしたボージョレヌーボの後味に気を良くした。
「気に入りました?嬉しいわ。どうです?もう一杯。」
蘭子は無邪気に微笑んでワインの瓶を取り出した。
「あ、恐れ入ります。」
ジャンは何故か恐縮しながらコップを差し出す。
「ブルゴーニュのワインですの。敵方の品物とか言いませんよね?」
蘭子はワインを注ぎながら甘えるように目を細めた。
「勿論です。確かに、ブルゴーニュとアルマニャックは仲が悪いとはいえ、良民の想いは同じ平和ですから。あのジル・ド・レ男爵もブルゴーニュ(ダウト!ブルターニュです)の血筋ですよ。それをひいても、ブルゴーニュのワインは旨い。」
ジャンは軽い酔いに任せて明るく言った。
ちょっと、うろ覚えだが、13世紀にはブルゴーニュのワインの質はすでに有名だったらしい。
で、パリ市民も結構飲んでいたようだ。
「本当に。チャーミングな男性と一緒だと、三倍美味しく感じるわ。」
蘭子はワインをぐっと空けて、その余韻に目を閉じる。
一瞬の静寂。
でも、ジャンは奈美の時とは違って沈黙を不安に思わず、穏やかに夜の静寂を楽しんでいる。
風の音に耳を傾け、蘭子に気を使いながら、静かに焚き火の様子を確認する。
遠くから梟の啼く声がする。
ジャンは、静かにこれからの事を考えていた。