蘭子登場
つまり、なっちゃんの代わりにそこの色男と話をすればいいのね。
蘭子は自分の状況を冷静に観察する。
9月に入り、ノストラダムスの本編を動かしたので、奈美でいつまでも遊んでいられなくなった私は、叔母の蘭子に代役をお願いした。
奈美は森の中、隣には『眠れぬ杜』のちょい役のジャンと二人は焚き火を囲み野宿をしていたのだ。が、連載再開したので、軽くまとめてジャンとは別れてもらう。
これは、設定ノートと言う作品なので、他の話が動き出せば、普通の設定ノート同様、話は途中で切れる。
が、話を進める為に、どうしてもジャンヌダルクの処刑場を見たい私は、代役を蘭子さんに頼むことにした。で、ジル・ド・レのジャンヌダルク奪還の話を書く余裕がないので、時を進め、奪還に失敗して、失意の中でジャンは、ジャンヌダルクに会うために旅をしている設定だ。
どちらにしても、蘭子も茶色いノートを持つ人物だ。
少し彼女のキャラクターも決めなきゃいけないのだし、設定なんだから好きにやるわ。
と、言うわけで、蘭子さんにも20才のピチピチボディになってもらう。
で、ジャンが驚かないように同じ姿にする。
ジャンは、偶然再び、謎の女性と焚き火をしているわけだ。
VRゲームのアバターの雰囲気も体験したいし、そんな感じにしてみよう。
と、言うわけで、焚き火の前だ。蘭子は状況に素早く順応する。
何しろ彼女は銀座の夜の女。その辺りは奈美よりも数段やり手だ。
さて、蘭子。奈美と違って男心がどうこうなんて、悩んだりはしない。
少しばかり胸が苦しいのに気がついて、首まわりのリボンを緩める。
一瞬、ジャンと目が合い、ジャンは少し緊張する。
が、蘭子は自分の鎖骨の辺りを見つめながら戸惑うジャンを、余裕の笑顔で迎えた。
「あら、ごめんなさい。胸が少し苦しくて。リボン、結び直した方が宜しいかしら?」
甘く気だるい声に、ジャンは困惑する。
昔のような緊張を伴う批判的な態度はどうしたのだろう?
「い、いや、だ、大丈夫です。ど、どうぞそのままで。」
ジャンは、赤面しながら、急いでこう言った。
「ありがとう。」
蘭子の赤い唇が優しく微笑みかける。
ジャンは、言葉を無くして、ただ蘭子を見つめた。 鉛筆のデッサンのような、蘭子の印象的な唇に目をとられる。女とは、短い時の中でこんなにも変わるものなのか?何てときめきながら。
う、うーん。
作者の私も困惑する。
同じ姿なんだけどなぁ。
キャラが変わると、こんなに違うのか。
話を作るために、前の記事を読み直したけど、シュークリームの事でジャンに平手打ちを食らわす奈美とは、偉い違いだ。
しかし、私は、なんでシュークリームの話なんて書いてたんだろう?
暑かったし、なんだか、前の文章が怪しい。
が、まあ、それはいい。
私とジャンが、困惑している間、蘭子はずた袋からワインとグラスを取り出した。
「頂き物ですけど、美味しいワインですの。一緒に飲んでくださいますかしら?」
少しすました感じの蘭子は、大切そうにワインのボトルを取り出した。
ジャンは、その美しく整ったワインボトルを見た。
「ボージョレヌーボ。素敵でしょ?」
蘭子は豪快にタブラーにワインを注いでジャンに渡した。
ボージョレヌーボ。ブルゴーニュの代表的なワインで、90年代に日本で大ブレークした事もある。
バブル時代を生きた蘭子には、ピッタリなので、時間を歪めてその年の一番を蘭子に持たせてみた。
その年の新酒、日本が世界一早く売られるとかで、有難がった記憶があるが、今では、ぐっと身近にスーパーなどで年末に見かける。
が、現在、1431年5月に日時を合わせている。
ジャンヌダルクの処刑場に、向かうために。