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茶色いノート  作者: ふりまじん
100年戦争
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奈美、男心を語る。2

しかし、男の気持ちも複雑だわ…


奈美は、おもわずため息をつく。


アイドルの話をする剛を観察しながら、微妙な男心を少しだけ知った奈美だが、盆明けに久しぶりに会った三神の変わりようにため息が出るばかりだった。


三神(みかみ) 勝矢(かつや)。ひとつ歳上の幼馴染みで、フリマの仲間でもある。

自分では、否定しているが、どこからみてもオカルト好きなのだが、本人は一般知識と言い張っている。 オカルト・日本史好きの勝矢と、アイドルなんて腑抜けた話をする気はなかった。

色々あって、SFに挑戦しようか迷っていたので、少し話をしたかったのだ。



ラジオ大賞にエントリーしたいので、相談にのってくれる?お茶おごるよ。




と、メールして呼び出したのは、宇宙の話をしたかったからだ。が、久しぶりの勝矢は、作業服姿でファミレスに現れて、おもむろにレンタルDVDを差し出した。

「凄いな、奈美。小説を書いているのか!なら、これが参考になるだろう。」

そうして差し出されたDVDは、きらびやかなアジアン・大河ドラマだった。

「ここの主人公、可愛いんだ。」


か、かっちゃん(;゜∇゜)


奈美は、良く通るハキハキとした声で快活に話す勝矢について行けずに見つめていた。そんな奈美を無視して、勝矢は語り出す。


「俺は、テレビで彼女を一瞬たときから、『これだ!』って思ったんだ。」

顔に甘さはないが、勝矢が『これだ!』と感じたのは、主役の女優さんに対してだ。

「この()は、決して美人ではないけど、人を惹き付ける魅力があるんだ。」

と、嬉しそうに評価する勝矢の手元のDVDに焼き付いている少女は…、美人で十分納得できるクオリティーがある。美人コンテストの批評家でもあるまいし、どんだけの美人を勝矢は求めると言うのだろうか?

「十分綺麗だよ。」

奈美は疑わしそうに勝矢を見た。勝矢は眉を眉間に寄せて、「これだから、素人は…」と、言った風な顔でより詳しく解説をしてくれる。

「ああ、確かに、綺麗ではあるよ。でも、性格がちょっとコミカルな所があって、美人と言うよりかわいいよね。」


はあっ?


性格、顔のパーツじゃないし。と、反論したいところを奈美はぐっとこらえた。

剛の事を思い出したのだ。剛もまた、アイドルの写真を見せて『いい子だよね。』と、言ったのだ。

人相占いなんてのもあるくらいだし、勝矢は占いも好きだから、何かあるのかもしれない。奈美は勝矢を観察することにした。

「そうなんだ…。」

奈美は女性として膨らんでくる不平不満を一気に飲み込んで同調した。


剛のように黙らせてはいけないわ…。


奈美は作り笑いを勝矢に向けながら、今まで心のどこかで悪い評価をしていた水商売の女性の職能に敬服する。

相手に気持ち良く話してもらうのは、技術がいるのだ。

「うん…うれる女子()は、やっぱり綺麗なだけではダメなんだ。可愛い+サムシングがなければね。この女優()は、おっとり美人に見えるけど、これでアクションやコメディもこなすんだよ。で、相手役の俳優も美男子ぞろいでね…、もう、日本のドラマなんて見られなくなるよ。」

勝矢は、90年代のテレビの批評家のように胸をそらせ、現在のトレンドを語る。

「か、かわったね…。そんなに面白いの?」

奈美は遠い目で呟いた。前に会ったときは、信長が好きで「是非もない。」が口癖だったのに。

「うーん。お盆にたまたまテレビを見ていたら、放送していてね、彼女を見ていたら、つい、魅逝ってしまったんだ。」


ああ、確かに、誤字だ。魅逝るなんて言葉はない。

が、奈美の幼馴染みのオカルト・ボーイは逝ってしまったのだ。

アジアン・女優の色香につれられて…。奈美は心のなかで呟く。



日本の柱がポッキリ折れて、中国の地震兵器で日本が沈没するはずじゃーなかったの?

秘密結社はどうしたんだ?

文句を言う私に、かっちゃんあなたはこう言った。

漫画『20世紀少年』を読めば、全ては本当の事だって分かるはずだっっ!と。



ふふっ。誰に語ってるのかしら?


奈美は気だるく微笑んでコーヒーで気持ちをきりかえる。


「す、凄いね…。アンタみたいな不思議君を一瞬で掴んでしまうなんて。凄いわ…アジアン・女優。実は、剛も一度、アジアン・女優のドラマにハートを鷲掴みにされて、2時間私を待たせたことがあるんだよ。」

奈美は、無表情に遠くを見つめながら、一体、どうしたら男を一瞬で引き付けられるのか、ボンヤリ考えた。

普通なら、勝矢をバカにして終わりなんだが、なろう作家としてデビューした現在、男心を鷲掴みにする術は身に付けておきたい。

待ち合わせを忘れたり、DVDを大量レンタルして、貴重な夏休みの夜をそれに費やしてしまう、そんな魅力的な掴み。その秘密はなんだろう?


「やはり、喜怒哀楽の表情の豊かさかな?で、決して美人ではないけど、魅力的な顔なんだ。」

勝矢の言葉に、奈美は男の業を見た気がした。


剛もこの「決して美人ではないけど、」という台詞が好きだ。

つまり、複数の女性が集まると、男は容姿の優劣を無意識にしてしまうのだろう。と、予測できる。

近所のオバチャンなら、オバチャン・ランキング


テレビのアイドルなら、アイドル・ランキング。


この場合は、女優ランキングで下の方なのか?とはいえ、一言言ってやりたいと奈美は思う。


「あんた…凄い上から目線だけど、この女優()美人だから。」

奈美はうんざりしながら勝矢をみると、

「でも、槍のアクションが綺麗なのは、胸が小さいからだよ。」

勝矢はアクロバットに話題を変えてきた。

「はあっ?」

奈美は混乱しながら勝矢を見た。


槍のアクションに胸の大きさ関係あるのか?


作者は一瞬、槍について書いている作家さんがいないか調べたくなり、奈美は物干し竿(さお)で父と夫婦喧嘩をする母親を思い返す。


槍は、相手との間合いがとれるので、女性の戦闘力を上げてくれる武器である。


遠くから相手の動きを阻止したり、攻撃、防御も出来る優れものだ。槍は持ったことはないが、物干し竿と太さはさほど変わらないだろう。物干し竿なら馴染みがある。

と、言うわけで、勝矢の理論は奈美には理解不能なのだ。

女子会で洗濯の話題はあっても、胸が邪魔なんて聞いたことはない。


むしろ、槍などの長ものは、身長に対する長さの方が問題だと思う。

長すぎると扱いづらく、壁などにぶつかってしまうし、短いと相手により近づく事になるからだ。


がっ。そんな実用的な話はいい。


それより、なろう的槍と女性のバスト問題だ。


男にはそんな風に見えるのか。


奈美は興味をそそられた。


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