ホラーファンタジー3
冬の静かな午後。
私達は美術館の中庭の芝生を眺めながら少し歩く。
作者は、爽やかな青空に気持ちが落ち着いたのか、少しだけ穏やかな顔をしていた。
「じゃあ、少し話をするね。」
作者は顔を上げて私をみる。
私はその生き急ぐような表情を笑顔で受ける。
「どうぞ。」
言葉少なくそう言って、作者の書きたい物語に集中した。
「私、この3年間、この話も忘れたわけではないわ。
で、この辺りの話を作るに当たって『祓魔師』の短編を書いたんだけど、これ、私、結構、気に入っていて、少し話を考えていたんだ。
だから、それをゲオルグでもやれると思うのよ。」
作者は話ながら少し迷うように、途中、途中で言葉をつまらせた。
「そうですね。本当に…様々な事を考えますよね。」
私は、この3年の七転八倒を思い出す。
『祓魔師』は、はじめの頃の作品で、分けのわからない所もあるのですが、作者は気に入っていました。
中世を知るための習作でもあった『祓魔師』は、魔女狩りと異常殺人がテーマでした。
「うん。ルターについても軽くは調べたよ…でも、変な事を書くと面倒になりそうだし、
私は、後のドイツ語、ドイツ文学へと続くルターの作ったドイツ語の聖書の話に興味があったから、
あんまり、宗教のイメージを持たせたくなかったんだよ。
ドイツ語の話になれば、北欧神話やルーン文字の話とかになると思うけど、
キリスト教の坊さんだと、その辺りに色々固い話になりそうなんだもの。
ルター自身は、わりと気楽な人みたいなんだけど、
信者の人からしたら、現在でも尊敬する偉い人だと思うから、バカな事はさせられないでしょ?
と、言うか、この場合は、プロテスタントの模範になるようなイメージで書かないといけない気がするのよ(-"-;)
面倒くさい…。
だから、カソリックの偉い人に破門されて、宗教やら教義に疑問を感じながら生きていても文句の出ない1521年からの話にしようとしたんだわ。」
作者は思い出すように言う。
「そうでしたね…。確か、ゲオルグも、謎の人として、あえて身分を語らないことで、更に批判をかわそうとか考えていましたよね?」
「うん。この時代、食いつめて、さ迷う人間は沢山いたろうし、実入りがよければゲオルグ…ルターを名乗る偽物も沢山いたと思うのよ。
だから、読者に責められた時には、偽物として成敗されてもらおうか、とか、考えていたんだ。」
作者は、そう言って苦笑する。
「私は、あまり、そう言った作戦は好きではありませんが……、まあ、心配しなくても、そんな面倒なコメントは来ないと思いますから、好きに考えれば良いと思いますよ。」
私は、この3年、ドイツの地図を見ながらブツブツ言っていた作者を思い返す。
古本屋で、ヨーロッパの旅行ガイドを買ってきて、ライン川をなぞっていました。
「そうね…、始めた頃は、もっと、感想やら批判が来るんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、いい感じに底辺作家だもんね。
なんか、web小説サイトだと、なろうが一番アクセスがあるんだって。
つまり…他のサイトだったら、もっとアクセスがないらしい(T-T)
250円…貰えるんかな(T-T)
私、ホラーが一番評価貰えてる気がするんだよね…
これで、250円行かなかったら、『ラジオ大賞』なんて、どうなるんだろう(-"-;)」
作者は、ふと現実に引き戻されたように暗い顔をした。
「文字数からいって、もう少しはアクセスが稼げるはずですよ。
確かに、ユニークは少ないですが、最後まで読んでくださる読者が多いのですから。」
私は、困りながら慰める。
この3年、他のサイトへ行ったことはありませんから、どうなるのか検討もつきません。
ただ、『ラジオ大賞』がweb小説を書く主婦の話なので、悪い結果になったとしても、小説の設定に生かせるとかなんとか…
慰める言葉も見つかりやすいですし、
完結すれば、ご祝儀のポイントが貰えるかもしれません。
そんなこんなで、何とかモチベーションを持ち直そうと、今のうちからシュミレーションをしながら、そう言った。