奈美、ジャンヌダルクを語る。7
「と、とにかくよ。まずは座って話しましょう。」
奈美に言われて、ジャンは慌てて奈美の手を離した。
「そう。なんか、調べるとワラワラと謎が増えてきたわ。イザボーは、元は神聖ローマの人だし。」
奈美はため息をついた。
そう、イザボー、バイエルン侯爵シュテファン2世の娘なんだそうだ。
バイエルンと言えばソーセージ。ソーセージと言えばドイツ。
イザボーは、外国人なのだ。
で、ここで謎なのは、どうして権力を手中に納めた娘に、バイエルン侯爵は手を貸さなかったのか?と言う問題だ。
息子を押し退けて権力に執着するイザボーが、実家を頼りにしないで、ブルゴーニュとアルマニャックの権力者をフラフラとしていたのが、よくわからないのだ。
で、この女に関わった男は、みんな不慮の死を迎えるのだ。
ミステリーなんて、考えたくもないが、段段それっぽくなるなぁ…
面倒くさいな。
なんて、ふて腐れてもいられない。
早いところ本編にかかりたいのだ。
が、ドイツが関わると、そうもいかない(;_;)
エタリ寸前の「ラノベ作家と予言の書」で、ルターに関わるからだ。
この時、神聖ローマ帝国では、100年戦争をどう考えていたのか…
普通なら、バイエルン公も、娘のイザボーを支援して、出来ればフランスを手中に納めたかったはずだ。
いや、手中に納めなくても、国境をはさんだ国で戦争が続くのは、嬉しくないはずだ。
で、ここで、ジャンヌダルクの故郷、ドンレミ村を見てみると、川を隔てて神聖ローマ帝国になっているのだ。
つまり、ジャンヌダルクの田舎では、神聖ローマ帝国の関係者や人間が行き来している可能性が高く、何か、陰謀の匂いがぷんぷんしてくる。
「つまり、あなたはジャンヌダルクが神聖ローマの手先だと、そういいたいのですか?」
ジャンが奈美を睨んだ。
「その可能性はあるって話よ。なんであんたたち、イングランドしか見てないのよ。それに、肖像画すら残ってないジャンヌもおかしく感じるわ。」
奈美は眉を寄せた。
そう、ジャンヌの正確な絵姿は残ってないらしい。
現在表示されているのは、後の絵師の想像で、一貫性もない。
これ、なろうっぽく考えると、ヒロインは好きに考えてるから絵師はいらない、と、言うところか…
つまり、ジャンヌダルクの話は、想像しやすいテンプレ話なのかもしれない。
100年の戦争なんだから、男も減るし、女性も攻めてくる兵隊から村や家族を守らないといけない。
男性を向こうに回して闘う女性のイメージは、わりと色んな人の心にあるのかもしれない。
「ジャンヌダルクって、本当にいたのかな。」
奈美は思わずつぶやいた。
「いますよ。では、今捕まっている女性は誰なんですか?」
ジャンの語気が強くなった。
「うん。そうだよね…。ごめん。」
奈美は慌てて訂正した。
設定の話だから、タイムパトロールのタブーはないけれど、発表された物語との整合性は保たなければいけない。
ジャンは、ジャンヌダルクとオルレアンで戦っている。今さらいない事には出来ない。が、考えると、後にジル・ド・レ男爵と実の兄が偽ジャンヌを本物と認めているのだ。
本当にジャンヌが存在していたなら、そんな間違いを犯すだろうか?
なんだか、面倒くさい問題になり、この話が終わらない。
どうすりゃいいんだ?この結末はっ( ̄〜 ̄;)