表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
茶色いノート  作者: ふりまじん
100年戦争
55/499

奈美、ジャンヌダルクを語る。5

ああ、大変だった…


奈美と作者はため息をもらした。


そう、ながながと放置していた物語。

しかし、作中のジャンには、ほんの一瞬の出来事である。が、場外では、私と奈美と時影が混戦していた。


『祓魔師』なんて話をいきなり書き出した私に驚いた読者もいるだろう。

そう、私は、この話を中断して、ラジオの短編賞に作品をエントリーしてきた。

調べるうちに、色々出てきたので、古本を語る枠が欲しかったのだ。


それは、二度目の『占書術師』の挑戦だった…


が、字数が多くなって、占書術師、時影の部分を取り除いてしまい、


『眠れぬ杜』では、他人が先に占書術師として登場し、

『祓魔師』では、自分のパートがなくなって、さすがに、時影は頭の中で文句を言いだし


こうまでして、書きたかった古本の話をする枠を作れず、


『祓魔師』の為に調べた資料が、こちらの話をより複雑にしたのだった。


そう、私は知らなかった…

ジャンヌダルクの話と100年戦争の奥の深さを…


それは、そうだ。


フランス人だって、日本の戦国時代について知っている人間は少ないとおもう。


が、ゲームとアニメの普及で、織田信長の名前だけは知ってるフランス人だっているはずだ。


が、人によっては可愛い少女と勘違いするフランス人がいるように(ゲームや漫画で女性化…ああ、小説でもあったな)、私も、ジャンヌダルクをよく知らなかったのだ。


が、ジャンヌダルク、アイドル説、なんだかいい感じに進んでいたりする。


奈美は、仲間の裏切りを疑うジャンに、話を始めた。


「まず、大事なのは、ジャンヌダルクが聖女か?ではないのよ。イザボーが、マリアになれない理由が大事なのよ。」

奈美は、焚き火を枝でつつきながら、この期間で知り得た情報に頭をかかえる。

が、まあ、待たせたジャンに落ち着いて貰おうと、買ってきたシュークリームを渡した。

「まあ、これ食べて機嫌直してよ。」


ジャンは、はじめてみる透明な何かに包まれた、お菓子のような物体を、恐る恐る観察する。


奈美は横で、袋を開けてシュークリームを取り出すと乱暴に口に放り込んだ。 「うっ、まーーい。」

途端に輝く奈美の笑顔に、ジャンは、毒ではないことを確認し、袋を開いた。

「ああ、その袋、私にちょうだいね。」

奈美に言われて、透明なこの紙のような不思議な物体を、ジャンは丁寧に折り畳んで宝石でも渡すように返した。

「これは、東方の貴重な布?なのでしょうか?」

ジャンは、興味深く奈美をみた。

「ビニールよ。確かに、服の素材にもなるけれど、回収しないと厄介なのよ。」奈美はビニールを受け取って神経質にポケットにしまった。

タイムパトロールものだと未来の物をおいて行けないわけだが、設定話でも、現在問題になっているビニールごみを中世ヨーロッパの森に捨てるわけにはいかないのだ。


うーん。勉強になるわ。

と、私が納得している横で、奈美は無造作に地面に置かれたシュークリームを目撃してジャンに激怒していた。


「な、何してんのよっ。こ、これっ、限定品なんだからっ。」

奈美は思わずジャンの頭を平手で叩いてしまう。

中世期の貴族で騎士の男性の頭を叩いて、普通はただではすまない、と、思う。最悪の場合、切り殺されても文句は言えない。

「ふざけないでよっ。これ、結構高いんだから。本物のバニラビーンズが入っていて、北海道産の生クリームの濃厚シューなんだからっ。」

奈美は200円程度のシュークリームの恨み言をネチネチとジャンに語り、それを聞いてるジャンは、すっかりしょげてしまう。


この時代、香辛料や香料は金の価値がある。

砂糖だって、袋で一キロを手軽に買えるわけではない。

単語は分からなくても、とんでもない失礼をしたのはジャンにも理解できた。「これじゃ、もう、食べられないわよ。」

奈美はシュークリームをつまんで、残念そうに捨てようとした。が、素早くジャンがその手を止めた。

「食べられますっ。食べさせてください。」

ジャンは、袋から開けた途端に、えもいわれぬ甘い香りを放つシューを真剣な眼差しで見つめ、奈美に平手打ちをされた勢いも手伝って強引に掴んだ彼女の手首を自分の方へ持ち上げて、思いきってシュークリームを一口で飲み込んだ。(カツオだったら、指をかじられてるんだね)

その時、形の良いジャンの唇が奈美の指に触れ、若々しい精悍なジャンの顔を間近で見て、奈美の心臓は女性らしく甘いトキメキを体全体に送り出す。

が、高貴な女性の指へのキスなんて、子供の頃からの日課のジャンからしたら、そんなものよりはじめてのシュークリームの柔らかさや口に広がる上品な甘さに全身がうち震え、奈美が赤面して自分を見てるなんて、考える余裕はなかった。

「こ、この食べ物は…なんなのですかっ!」

ジャンは、興奮して奈美の手を引きながら聞くので、奈美は自然とジャンの胸の中に倒れこみ、若い男性の逞しい胸筋を感じながら、困ったようにこう言った。「シュークリーム」

「シュー…クリーム?」

ジャンは、若い女性が自分の胸の中にとらわれて赤面しているなんて、気にする余裕はなかった。


シューとは、フランス語でキャベツの意味だ。


未確認の甘い食べ物が、キャベツのクリームで出来てるとか言われたら、混乱しないわけはない。


学校給食で、ニンジングラッセに初めて遭遇した時を思い出した作者の私は、ジャンの驚きがわかるぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ