サイエンスはファンタジー
蒸し暑い8月が始まりました。
それでも私の庭は、涼やかな夏の夜風に夜来香の香を含んで流れてくるのです。
庭の樫の木にハンモックを設置して作者を寝かせました。
本日は雲のない晴天。
天の川が美しいのです。
「ねえ、時影、今日は『夜来香』歌ってよ。」
作者はハンモックを揺らしながら甘えるように言いました。
「今度は、どのように歌いましょうか?いっそ、ヤンデレとか、やってみましょうか?」
私は呆れながら聞いてみる。作者は最近意地悪なリクエストを私にしてくるのです。
「ヤンデレ(~_~;)私、あれはよく分からないんだよね。私、ヤンキー娘が真面目な少年に恋をする、みたいな話の事だって思ってたんだよ。」
作者は難しい顔で溜息を吐いた。
「ふふっ。ヤンデレ…病ながら一途に愛する。そんな恋愛の事ですよね。」
「そうみたいね。なんか、上手く描けると上位ランキングに一気に駆け抜けれらる見たいよ。でも、面倒臭いのよっ。病んでる人とか。執着するほど好きになるとか。あー。面倒くさいわ。」
作者は渋い顔で空を見上げた。
私は夜風の精霊に伴奏を頼みました。
『夜来香』は1944年李香蘭の持ち歌として、映画の主題歌としてリリースされました。
戦時中の曲なので、この曲にはさまざまな物語がありますが、今日はそんな事は忘れてただ、歌いましょう。
夜来香は中国、インドなどに生息する植物です。
とても香りの良い花で、その歌をモチーフに作られたこの歌は、甘い南の夜の刺激的な恋を思わせる歌です。
作者は軽快な曲を聴きながら空を眺めています。
私は、貴女を思って歌うのです。
本日、あなたは私の花、夜空に恋を…匂い立つ。私の夜来香
歌い終わると、作者はハンモックからゴソゴソと起き上がります。
「よかったわ。なんか、元気を貰えた気がする。さあ、書こうか。なんだか、やる気が出てきた。」
作者お笑顔が嬉しいです。
「はい。」
「なんだか、色々と面倒くさいことになってるんだよ。『幽霊探偵』あれ、なんか夏目漱石と繋がって、ゴールデンドーンとアッピンの赤い本が繋がってきてさぁ。」
作者が幕しててるのを私は嬉しく聞いていました。少し、はしゃいでいるかも知れません。
「はい。それでは家に入りましょう。そして、そうですね、甘いアイスティーと共にお話ししましょう。
お菓子は…」
「お菓子は、今日はいいわ。血糖値が気になる年頃だからっ。」
作者はそう言って家に歩き出しました。
さあ、物語の始まりです。