雨音
静かな雨の午後。作者のうつキーボードの音が響いています。
今回は少し、忙しそうで、私と話をする暇はないようです。
少し、寂しくもありますが、それでも、こうして、私の近くにいてくれる事が嬉しいのです。
私は、おやつのプリンを作り終え、冷蔵庫にしまうとプリンが冷えて、作者が一仕事終えるまで、ピアノを弾くことにしました。
こんな午後に似合うのは、やはりショパンでしょうか…
それとも、懐かしい流行歌…
少し考えて、デルフフォニクスさんの『La La(means I love you)』を弾くことに。
この曲は言えない思いをハミングに包んで歌うそんな曲です。
私は、この曲に何を忍ばせましょうか?作者へのエール?それとも、
少し激しさを増した初夏の雨音が、私とデュエットするようにサラサラと流れてゆきます。
なんだか楽しくなってきました。
作者は、今、どんな物語を書いているのでしょうか?
幸せな話なら良いのですが、多分、そうはならないのだと思います。
一曲弾き終わる頃、作者がキーボードを打つのをやめました。
「時影、なんか食べたい。」
作者が立ち上がって子供のように言いました。
「お茶にしましょう。プリンを作りましたから。」
私は笑顔でそういうと今日の紅茶を思案します。
こんな雨の降る午後は、少し軽くて香のよいフレーバードティーにしましょうか。
私は、ライチの香の紅茶を取り出しました。
そして、プリンにアイスとオレンジでドレスアップさせると作者のもとへと向かいました。
「なんだか終わらないわ。」
作者はプリンを口にしながら呟く。
「それはいつもの事ですよね。」
私は少し、皮肉っぽくいう。
「いつもってわけじゃないわよ?完結した話もあるもん。」
作者は少し、不満そうに言って立ち上がる。
「どうしましたか?」
怒らせたのでしょうか?少し不安になります。
「アイスティーが飲みたくなったの。」
作者は困ったように笑う。
「それでは私が氷を取りにゆきましょう。」
私も立ち上がり、そして台所に向かう。
作者は肩をすくめて座り直した。
アイスティーを淹れます。
氷をたっぷりいれたグラスにポットの紅茶を注いで。
先ほどの残りのオレンジをグラスに飾ります。作者の笑顔が見られるように。
激しさを増す雨に暗くなる部屋で、作者はアロマポットの蝋燭に火を灯しました。
暗くなった部屋で、蝋燭の光が温かく周りを照らす。
「素敵ね。あとでイランイランの精油でも加えましょうか?華やかな気持ちになれるから。」
作者は夢見るように言いました。
「良いのですか?あの香りは、人をセクシーな気持ちにさせるそうですよ。」
私のからかいを、作者は軽くあしらいます。
「セクシーかぁ。恋愛描写も面倒くっさいんだよね。イランイランで気持ちが上がるかしら?」
作者は少し投げやりに笑った。
「気分を上げるなら、フランクインセンスなどはどうでしょう?古代から神殿などで重宝された香ですよ?」
私の言葉に作者は笑った。
「それでいいわ。でも、イランイランの香を嗅いだからって、あなたを襲ったりはしないわよ?」
そう言って作者はプリンを平らげた。