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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
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霊廟



「全く、タイミング悪すぎよっ。」

作者がサンドウィッチをふて腐れて口にする。

「まあ…仕方ありませんね。」

私はお茶を作者に渡した。

「仕方ないって…これ、本当に面倒になりそうよ?

あんな大手が…やらかすなんて。」

作者は渋い顔をする。


「そうですね。やっと乱歩作品を選べたのですから。」

作者の横でお茶を口にする。

リンゴのロシアンティが今日はいつになく甘く感じます。

「そうよ。もう、ゲームの世界だって、私、ディスクの時代でおわってるのよっ…オープンワールドとか、メタバースとか、もう、頭が沸きそうなのに…

乱歩の作品を理解するのが…こんなに時間がかかるなんて考えなかったわ。」

作者は叫ぶ。


仕方ありません。


二次作を作るのは簡単そうで大変なのです。

特に、100年の人気作品ともなれば、他の作者のオリジナルの展開やら、思い違い、描かれた作品の時代背景も理解してからではないと面白い作品にはなりません。


「オープンワールド、『パノラマ島奇談』をそうするのですよね?」

私の質問にサンドウィッチを飲み込みながら作者は少し考えてから答える。

「ちょっと違うわ。と、言うか、パノラマ島…の話で三作は作る予定だから、正解は複数なんだけど、清貴の作る世界はメタバースに近いと思うわ…

今のゲームって、10年近くの歳月をかけて作り上げるんだって。

清貴は葵のために、そのメタバースを作り上げようとするのよ。」

作者は悲しそうに笑う。


10年…それは人間には体力や精神面でも大きく変化する期間です。

まして、20代の10年と言えば、変えのきかない人生の一番輝く時です。

「タージマハルの物語を思い出しますね。」

ため息が1つ、ついて出ました。


タージマハルは、17世紀のインドの霊廟です。


それは皇帝シャー・ジャハーンが妃ムムターズ・マハルの為に建設した、世界遺産に登録された美しい建物です。


「タージマハール…そうね、皇帝は妻の霊廟を作り上げ、しかし、自らの霊廟の計画は叶わなかったのよね。」

作者は夢見るように目を閉じる。

「はい。けれど、お2人は並んで安らかに眠られているのです。美しい霊廟の伝説と共に。」

私は作者の腕の温もりを感じながら、そう言った。


素晴らしい霊廟も、伝説が無くても、こうして、作者の存在を隣に感じながら眠れるなら…どんなに素晴らしい事でしょう。

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