ティタイム
「ねぇ…服、これじゃなきゃダメ?」
お風呂から出てきた作者が心配そうに私に言う。
華やかな深紅のシルクの生地全面に柔らかいピンクのシフォンにミニバラの刺繍をあしらった薄布をのせた華やかな生地で作った豪華なドレスです。
「はい。クリスマスに合わせて秋バラの精霊が作ったドレスですから。」
問答無用です。作者は不安げにドレスに着られていましたが。
私は作者を席に誘いました。
「心配しなくても、とてもお似合いです。」
私の言葉に作者は、何か言いたいことがあるように口を開く。その言葉を私は止めた。
「勿論、汚れ防止の加工済みです。心配しないでお食事をお楽しみください。」
私の言葉に作者は上目使いに悔しそうに口を尖らせる。
「…色々、ありがとう。」
作者の言葉の小さなトゲは…気にしないでおきましょう。
さあ、パーティです。
2024年のクリスマスパーティを始めなくては!
まずは、あのクリスマスプディングを…
プディングはイギリスを代表するクリスマスの定番ケーキです。
中世では、もっと野性味のある…甘くないもので、現代の洗練された形になるのはビクトリア女王時代と言われています。
特製のブランデーをプディングにかけて部屋の明かりを消すと静かに点火しました。
ほの暗い、青い炎が立ち上ぼり、壁のジンジャークッキーがクリスマスの歌を歌います。
『ジングルベル』は、1857年ジェームス牧師が作詞作曲し、世界に広まった日本でも愛される名曲です。
炎が消える頃、燭台に灯をともし、作者にナイフを渡しました。
「クリスマスプディングには金のチャームが入っています。好きなところを切り分けてください。」
イギリスでは、プディングに陶器や金属のチャームを入れて楽しんだそうです。
フランスの、一日王を決める『ガルロッテ・デ・ロア』などがあります。
「ねえ、そのチャームって、未完に関係したもので、当てたら連載再開とか、言わないわよね?」
作者は渋い顔で私を見る。
「その方がよろしかったですか?」
少し惚けて聞いてみると、作者が不機嫌に私にプディングを切り分けて渡す。
「はい、音符のチャームが出てきたらクリスマスソングをうたうんだからね。」
作者が膨れっ面で私を見つめていますが、残念ながら、それは『ご褒美』でしかありません。
「わかりました。では、音符が出なかったら『お嫁さんになってあげないぞ』を歌ってもらいますからね。」
私の言葉に作者は蒼白になる。
『お嫁さんになってあげないぞ』はアニメ キテレツ大百科のオープニング曲として流れました。
後にオバサンになった作者が懐かしさにカラオケで歌いドン引きされた、黒歴史的な歌なのです…が、私は作者が歌うこの曲が大好きなのです。
「い、良いわよっ…(///〜///)さあ、勝負よっ。」
赤面する作者に急かされて椅子に座るとプディングをフォークで探ります。
さて、どうなりますか。