新年
静かな夜が再び部屋に訪れました。
窓の外の雪明かりがぼんやりと外の景色を写しています。
暖房も明かりも…私には必要はありません。
部屋の壁には、作者のために袋に入れて飾ったクリスマスのジンジャークッキー
棚には雪だるまの形にした餅が鏡餅とならんでいます。
ああ…そうでした…もう、鏡開きは終わったのですね…
ボンヤリと窓を見つめながら私はソファにうずくまっり動きません。
だって寒いから…心が…
作者が消えたこの部屋に私は何も興味が持てなくなったのです。
楽しかった創作活動…
作者は興味が無くなったのでしょうか?
それを考えると、胸が痛みます。
なぜなら、作者はwebで投稿を続けているのです。
私ではない…誰かとの物語を…
ガタッ…
玄関辺りで音がしました。一瞬、反応してまた、うずくまります。
どうせ、北風のイタズラなのです。
ピンポーン。ピンポーン、ピンポン、ピンポン、ピンポン!
「ちょっとぉ…誰もいないのっ!もう、時影!開けてよぅ。」
作者です!
あの、品が無い少しふてくされた暖かみのあるアルトは、間違いなく私の作者です!
急がなくては!ああ、暖炉は凍えているではありませんか!
心配する私に暖炉の消し炭をかき分けて火の精霊が勢いよく燃え上がります。
予備の薪が並んで暖炉へと向かいます。
きっと、すぐに部屋は暖かくなるはずです。
火の精霊は、薪を燃やしながら美しい歌姫の姿に変わり歌います。
クリスマスのラブソングを。
すると、テーブルのキャンドルが順番に明かりが灯りました。
部屋の準備は良さそうです。さあ、作者を迎えにいかなくては!
風のような早さで玄関を開けると、作者が行きまみれのコートで震えていました。
「ああ…良かった。もう、玄関の雪掻きもしてないんだから。出掛けたと思ったよ。」
作者はいつものように皮肉げな笑顔で私を見た。
私は…返事を返す前に作者を抱き締めていました。