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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
452/499

コンタクティ25


「それにしても、本当に、黒人を主人公にするなら、やはり、ハンコック先生の本にすれば良かったと思うのよ。」

作者は少し、ふてくされたように言う。

「どうしたのですか?」

私は聞いた。

作者は『神の刻印』を手にため息をつく。

「だって、クレオパトラを黒人にしなくても、この本…正確には、『パルチヴァール』に登場するのよ。

美しい黒人の女王。」

作者は渋い顔をした。


『パルチヴァール』は、12世紀のドイツの詩人エッシェンバッハの作品で、主にアーサー王と聖杯の物語です。


「どういう事でしょう?」

「なんかね、『パルチヴァール』の登場人物、白鳥の騎士の父親のガハムレトって騎士が登場するの。

で、この人、旅の先々で女を口説くんだけど、その一人にベラカーネと言う女性がいるのよ。」

「海外の名作の登場人物を、そんな渋い顔で説明しないでください。」

とは言え、プレイボーイを嫌う気持ちも分からなくはありません。

特に、美しい中世の騎士物語なら…なおさら。


私は、冷たいレモンティーを差し入れる。


作者はそれを嬉しそうに飲んで話を続けた。


「う、ん。まあ、それはともかく、そのベラカーネさんが、シバの女王ではないか、と、ハンコック先生は書いていらしてるわ。」

作者はそこで苦笑をする。

「でも、シバの女王は、白人と言う説もあったとおもいますよ?」

そう、シバの正確な場所はまだ、特定されてなかったように記憶しています。

「それ、それね、私も、シバの女王の黒人バージョン、白人バージョンがあって混乱したんだけど、今回、調べて合点がいったわ。

なんかね、『シバ』と言うくには、アラビア辺りにあったと伝説が残る国で、

『セバ』と言うエチオピアな辺りにあった別の国の事があったみたいなの。

この二つの国が、後に混同されて、黒い女王と白い女王のバージョンが出来上がったらしいわ。」

作者は楽しそうに笑ってレモンティーを飲む。

「なかなか、興味深いですね。」

と、言う私に、作者はにじりより、そして、興奮しながらこう言った。


「興味深いじゃないわよっ!私たち、金鉱を堀あてるかもしれないのよ?

これはね、ラノベ作家の宝の設定(ちず)なのよぅ。

今年中に書き上げられたら、この弥助、化けるかもしれないわよっ。

『セバ』はね、エジプトとスーダン辺りの地域なの!あの、クシュ王国のあった場所なのよっ…


グラハムハンコックの著書、クシュとエチオピアの伝説、アーク、聖杯伝説に、テンプル騎士団!


この欲張りセットで、主人公は黒人の弥助。

勿論、聖書関連だから、軍人(さむらい)にはしないわ。

そこに、消えた草薙の剣と、それに支えていたと考えられる織田家のなぞ。

失われた士族とアーク。これを東の果ての国、日本を舞台にやらかすのよ?

なかなかワクワクするでしょ?」

作者はにんまりと、笑う。

ため息がこぼれました。

「確かに、その膨大な物語を…わずか数ヵ月で書き上げられたら、奇跡を見ることもあり得るかもしれませんが、私には、乱歩の『悪霊』のエピソードが重なって見えますよ。」


あの江戸乱歩の未完作『悪霊』も、9月あたりに始めのオファーがあったように記憶していますが、急な仕事に乱歩は完結出来ずに謝ることになりました。


遅筆な作者には、残酷ですが不可能でしょう。


「悪霊…かぁ…。なるほど、確かに、こんな気持ち、乱歩先生も味わったのかしらね。」

作者は嬉しそうに笑った。

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