コンタクティ19
藪こぎ
登山道などの道がない場所を草木を掻き分けて進む行為。
自分の背丈より高い植物に視界を遮られ、道を間違い迷う危険もある。
サバイバルの訓練として軍隊が行うこともある。
「で、スーパー時代劇劇のどこら辺で『藪こぎ』なんて使うのでしょうか?」
私は作者に聞いた。
町中で暴れる武者もどうかと思いますが、藪こぎのサバイバル・アクションも、違う気がするのです。
「本当よ。全く、なんで、ハンコックの案に乗らなかったのかしら…そうしたら、面白い話になったと思うのよ?なんか、あの本ではポルトガルの騎士団とか登場するらしいし。」
作者は、検討違いの答えをします。
「どちらにしても…テンプル騎士団の扱いが貴女とは違いますから、どうにもなりませんよ。」
私はため息をつく。
「そうよね、単体で作ればよかったのよ。と、言うか、私の話は、ゲームではなく、万博で弥助の展示をしようとしていて、混乱しているであろう、モザンビークの人達に向けての提案として作るといいと思うの。」
作者はそう言った。
「モザンビークの関係者…に宛てるのですか?」
少し、不安になってきました。
「少し、違うなぁ〜なんか、物語の目的として、何を描きたいのか、読者に提示するため…かな。
ほら、時代劇の地方漫遊って、その土地の色々を入れるじゃない?」
「ああ、名所や名物をさりげなく紹介する…あれ、ですか?」
「うん。激しい内戦が鎮まって、モザンビークは、治安も少しずつ回復をはじめたらしいの。
モザンビークって。本来なら、ここでモザンビークの大使としては、弥助には、故郷のモザンビークの名産や名所を紹介して欲しいと思うのよ。」
作者の言葉に笑いが込み上げます。
「昭和…ですね。」
「国の紹介に昭和も令和もないわよ。
モザンビークで、あなたは何を思い浮かべるの?
これだけ知名度を上げた『侍』ですら、おかしげな表現をされちゃうんだから、知名度や正確な認識は、して欲しいと、どこの国でも考えるじゃない?」
作者は不満げに言う。
「それでは、どうするつもりなのです?」
少し、からかいたくなります。
「とにかく、日本人の親友を作るわ。wikipediaによると、少年使節が1586年にモザンビークに寄港しているらしいの。
この使節の少年との物語にしたら、随分とドラマティックになるんじゃないかしら?」
作者が夢見るように笑います。
「タイムトリップの少年はどうするのです?」
私の質問に、作者は頬を膨らます。
「いいのよ、設定を考えるだけなんだから。
とにかく、この夏、これで話が作れる高校生は、一攫千金の夢があるって事よ。
とくに、黒人のルーツがある子はね、
スポーツはともかく、文学でハーフの子が頭1つ上がるのは至難の技だもん。
でも、この設定は、もしも、が、あり得るかもしれないわけよ。
虫食いの宝の地図みたいなもので、ロマンを楽しみたいのよ。」
作者はニヤリとする。
「随分、余裕じゃ、ないですか。」
私の言葉を作者は無視した。
「今年だけの…特別なチャンスだわ。
モザンビークの色々を紹介して、時代劇に仕立てられたら。
弥助は、モザンビークの海を、森を、食べ物を思い出し、日本の少年に憧れさせる。
そして、読者にも、行きたいと思わせられたら、奇跡がおきるかもしれない。」
作者は嬉しそうに笑った。
「そうですね、そんな話が作れたら、楽しいでしょうね。」
そんな、他人のサクセスを考えている場合ではない…そう、言いたいのですが、夏、アニメの放送日を楽しみに語る、少女の作者の面影が…否定しようとする私を止めるのです。