コンタクティ15
『結婚行進曲』は劇『真夏の夜の夢』の劇曲としてメンデルスゾーンが作曲しました。
現在でも、結婚式の定番のBGMとして人気の曲です。
『真夏の夜の夢』は、シェイクスピアの劇で、人間や妖精が森の中で様々な思惑に混乱しながら、やがて大大円を迎える喜劇です。
作者の物語も…最後には上手くまとまる事を祈ります。
「まずは、考えた設定を話してみませんか?」
演奏を終えて私は、急く気持ちを押さえながら作者を見る。
「うん…そうだね。どうせ、人なんてあんまり見てないし…
少し、話してみようかな〜」
作者は穏やかに笑いながら話始めた。
「話題のゲームの設定、問題は『侍の設定が間違ってる』事があるのよね。
と、同時に、弥助をアフリカ風味にしなかったのが問題だと思うの。」
作者が元気に話初めてホッとしました。
「ヤスケ…モザンビークの出身でしたね?」
「そう言われてるみたい。そこから、インドへと売られるから、インドの道具とかでも良いんだけれど、異国の得物を使った方が、説得力が増すと思うのよ。」
作者はそう言って頷く。
「そうですね、日本人が作るなら、弥助は外国人の物珍しい風習や行動をさせるでしょうね…」
「うん。でも、今回、脚本が海外の人だから、なんだかおかしいの…
まあ、私も、海外の歴史物を書いてるから、そこら辺は再認識させてもらったわ。」
作者がため息をつく。
アイスティーのお代わりを差し出しました。
本日は、ベルガモットの代わりに柚子の砂糖漬けをほんのりときかせてみます。
「そうですね。読者が誰なのか…これで随分と変わるとは思いますが。」
「変わるわね…海外の人は、日本刀を振るう弥助を見たかったのでしょう?」
「そうでしょうね…史実がどうとかコメントせずに、本格時代劇とか…そんな風に表現していたら、変わっていたかもしれませんね?」
私の発言に作者が噛みつく。
「あら、時代劇って、ドキュメンタリー風味の歴史物より大変なのよ?
お約束はいっぱいあるし、見せ場とか色々仕込まないといけないし…」
「すいません…」
とにかく、謝るに限ります。時代劇は昭和の夢。
下手にさわるべきではありませんでした。
「別に、謝らなくても…まあ、あの話は、発表されてから楽しむにして、私の話をするわ。」
「はい。」
「私はね、弥助を使って、日本舞台で、テンプル騎士団と聖遺物のワードから、グラハムハンコックの本を思い出したわ。」
と、作者は本を取り出した。
グラハムハンコック…
イギリスの作家で、古代エジプト等の斬新な作品で90年代に日本でも人気を博しました。
「大丈夫ですか?彼の作品にも賛否があったと思いますが…」
そうです。最近のドキュメンタリー風味の作品は、用心して参考にするべきなのです。
「でも、20年以上経過したし、問題点は既に出尽くしてると思うの。
そして、当時、少年だった人達が親世代になってるはずだから、それほど心配は無いと思うのよ。
昔を思い出しながら、子供とフィクションを楽しむには、良い感じの本だと思うわ。」
と、作者が取り出したのは『神の刻印』グラハムハンコックの本。
「『神の刻印』ですか、なかなか、渋いところを持ってきましたね。」
私は、90年代の雰囲気を思い出しながら、なんだか楽しくなってきました。