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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
439/499

コンタクティ15


「確かに、違ったわよ…でも、大まかに似てくるなって思ったから、パクりとか言われる前に何か書いておこうと思ったんだ。夏ホラーも書こうとしていたから。」

作者はそう言ってレモンパイを頬張り、うまいと呟く。

「本当に…そうやって欲張るから、うまく行かないのですよ?」

アイスティーのお代わりをいれながらため息をつく。

「だって!」

と、作者は叫んでアイスティーを一気飲みした。

「だって、絶対に、面白いネタだって思ったのよ!

隠密ヤスケ。」

「隠密ヤスケ…ですか…」

また、長くなりそうな未完の匂いがぷんぷんしてきます。

「うん。あの人たち…参考にする資料を間違えたのよ。」

「随分と自信満々ですね?」

ため息がこぼれます。

「うん。この場合、参考にするのはグラハムハンコック先生よ。」

作者は嬉しそうに本を見せます。


「グラハムハンコック…確か90年代に話題になりましたね。」


グラハムハンコック

イギリスの作家で、90年代日本でも人気になりました。

「まあ、騒ぎがなんか、政治とか陰謀論に流れてきて…もう、簡単に使えないんだけれど。」

作者は深くため息をつく。

「まあ、書くものは他にもありますから。」

取り敢えず、慰めの言葉を。他には思い浮かびません。

「そうね…本当に悔しいわ。トンデモ時代劇は楽しいものなのに…

日本に関係ない嘘の話が真実として拡散されるとか言われると、もう、ね。」

作者は深いため息をつく。

「そうですね…少し、休みますか?」

「いいえ…なんか、そろそろ書かないと。

勿体ないけど、弥助は止めなきゃ。ノストラダムスの件があるから、何でも信じる人の気持ちも分かるし。」

作者はため息をついて続けた。


「書きたいわ。でも、ノストラダムスの一件も思い出すの。

今回の弥助の話は、似ているのよ。

1人の作家が、地位が欲しくて盛った話がバズって、人々が望むように新しい刺激を作り出す。

史実は少ないから、推測が増え、そのテンプレに価値が出ると、それを真似る人が更に弥助を盛る。

フィクションなら良いって言うけれど、ノストラダムスの件には、世紀末風味のサブカルが随分と影響を与えたのよ。

10代の子供にね。

彼らは、一次とか、二次資料より、ささる話を信じるから、そこから、霊感商法とか、様々な被害を産み出す結果になったの。

弥助も、海外では凄いことになってるらしいわ。

弥助がサムライだと信じる人の気持ちはわかるわ。

私だって、予言者のノストラダムスが今でも好きよ。でもね、書くのは今でも神経を使うのよ。

弥助はサムライじゃないし…

ノストラダムスが1999年に人類滅亡なんて予言してないわ。

でも、今でもネットじゃ、大予言者でミームになってる。

なんか、ふんわりドキュメンタリーって、害悪なのよ。」

作者は不満そうにアイスティーを口にする。


無理もありません。


そんな、少女時代の…ノストラダムスの清算のために5年を費やしたのですから。


「そうですね、今は…難しい話より、恋愛小説に力を注ぎましょう。」

明るく話しかける。

でも、寂しい気持ちが込み上げる。恋愛小説を書き始めたら、私のところへは来てくださらなくなるから。

「でもっ、面白そうなんだよっ(>_<。)

この設定、なんか、色々と!もう、なんで、こんなしくじりを!

腹が立つわ。」

作者は、それを言い訳にレモンパイのお代わりを要求する。

私は、笑ってそれを用意しました。


穏やかなひととき…


大切なひとと、2人だけの歴史の不思議を探す旅。

レモンパイを作者に渡すと私はピアノを演奏することにしました。

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