コンタクティ13
「この話、『人間50年』の信長が使った草薙の剣を『人生70年』の利休が仕舞う物語になると思うのよ。」
作者が夢見るように語り始める。
フランクインセンスの薫りを纏った火の精霊が、古代エジプトの神官の装束で歌を歌う。
フランクインセンスは、樹脂から作られる精油で、リラックスと瞑想を助ける働きがあると言われています。
私は、静かに作者の横に座り、続きを聞いていました。
「信長は、武将のイメージが強いけれど、家系は神官なのよね。
織田家は尾張を支配している…つまり、伊勢を守護する者でもあるのよ。
今川家がどうかは分からないけれど、とにかく、桶狭間の合戦で負けたのだから、信長に贔屓で話を作るわ。
幕府が不安定になり、戦国時代に、国が混乱しているわけだから、次の帝を皆、探しているはずよ。
ここで無名の神官が戦国時代に新星として生まれたのは、その時代の強者達も興味がわいたでしょうね。」
作者は灯りを見つめながら夢の中をさ迷うように話しています。
声を…かけるべきでしょうか?
気持ちにブレーキがかかり、ただ見つめる私に、作者は夢に酔った視線を流す。
「…そうですね。オカルト…と言うより、神秘な雰囲気で作り込むなら、安倍晴明風味に作り込みたいところですね。陰陽師の雰囲気を信長に纏わせましょうか。
『敦盛』を舞うのですから、装束も違和感がありませんし、歴史好き、刀好き、神社巡りに、地方の観光組合、全うに進める分には見方になってくださるでしょう。」
信長は、一説によると女性とみまごう美男だそうで、これは戦国美人とうたわれた市を妹にもつので、批判はあっても、炎上はしないと思います。
が、装束姿の美しい陰陽師の信長に設定したら、やはり、腐女子むけと思われる…覚悟は必要でしょう。
しかし、作者は小銭儲けを目的にしているわけですから、女性向けとして話を作り、刀剣、腐女子、歴女を中心に話を作り込んでゆけばいいのです。
女性の旅行客は、観光協会も誘致をしたいはずですから、この辺りも狙って行けるはずです。利休と茶道…これも、女子向けのサービスとして広げやすい。
ああ、だだ、私の作者のBLは全く駄作で、未完になる可能性があります。
「そうね…『猿酒』を作るときは、ジャン一世の生まれ変わりをイメージしていたわ。でも、今は、ジャンヌダルクが見える。」
作者は蜃気楼を追いかけるように遠くを見つめていました。
全く…
この人は、いつも金儲けの話を下品にしているわりに、変なところで純粋なのですから。
『猿酒』は、ジャンヌダルクの時代のキャラクターが戦国武将に転生したら?のテーマに作っていました。
作者は、まだ、その物語を探していたのですね?
もう、我々を忘れたかもしれない読者の脱け殻を連れながら。