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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
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コンタクティ12


アイスコーヒーを飲みながら、我々は気持ちを落ちつけました。

作者は何か物憂げに目を伏せて考え事をしていました。


「どうしました?」

私の質問に作者は苦笑する。

「いや…信長って…熱田神宮って…名古屋にあるんだなって思ってさぁ…(T-T)」

「確かに、そうですが…何を今更…」

「だって…名古屋のモーニングを食べるために小説書き始めたけれど、剛をメインに考えたのは失敗だったかもって、今更、考えちゃったのよ。」

作者は深くため息をつく。

「まあ、確かに、秀吉も、家康も、信長も…名古屋にはゆかりがありますからね、そして、人気もありますし、確かに、それも良かったでしょうね。」

私の言葉に作者は渋い顔をした。

「う、うん…でも、良く考えたら、人気の人物だから、私が小手先で書いたところで500円を稼げたかも…謎だわね。」

作者はコップに残った氷を口にした。

「それも、ありえますね。大体、簡単に書けるようなら、『猿酒』の続編を投稿できたはずですから。」

そう、歴史の話は、とにかく、史実に(つまづ)くのです。


「そうね…今回も、利休の宝剣で引っ掛かったもん。」

作者は残りの氷をカラカラと鳴らしながら口に入れようとする。

「そうですね。しかし、草薙の剣、なかなか、興味深い選択でした。」

本心で誉めたのですが…作者には不満なようです。

「いや、あれは失敗だよ…作らなくて正解だった。長くなるもん。」

「長く…ですか?」

「うん。掘れば掘るほど、怪しいネタが沸いてくるし、私の話の場合、刀の形状が問題なの。」

作者は氷を口に含み、しばらく、無言で天井を見上げる。

「刀の形状…」



確かに、そうです。

今回は、推理ジャンルの為の短編でした。

利休の辞世の句を使った謎解きだとするなら、やはり、宝剣のいわれ、そして、形状が問題になるのでしょう。


「うん。刀の形状、材質、壇之浦の海に投じた刀を、源氏も血眼になって探したはずよ、でも、見つけられないと言うのだから、普通の刀の形状ではないのよ。

ついでに、利休が祖仏を殺すために使うのだから、利休の小説バエを考えないといけないわ。」

作者は負け試合を解説するような軽い口調で話す。

「そうですね、海に沈めたとするなら…サビも気になります。」

ああ、ダマスカス鋼のナイフの話をした日々の興奮が胸に沸き上がります。

「そうね、錆びない何か…だと思うわ。大きさも、ナイフ、小刀程度の…ビックリするような小さなものだと思うのよ。」

作者の言葉に生気が戻り始めました。


「そうですね。利休に握られた宝刀ですから、シックで品がある品を用意したいですね。」

とは言ってみましたが、『大刀(たち)』ですから、本来はそれなりの長さのあるものだと思います。


「うん。その時は、形状とか、思い浮かばなかったけれど…あなたと話していたら、なんか、思い浮かんできたわ…(-_-;)」

作者は渋い顔になる。

「どうしたのですか?」

私の問いに作者は困った顔になる。

「うん…色々と、ね、繋がりはじめてさ、頭がゴチャゴチャするんだよ。」

作者は甘えた顔をしてアイスコーヒーのおかわりを私に頼んだ。



アイスコーヒーを取りにゆきました。

小粒のキャンディー型のアイスクリームは、作者の気持ちをあげてくれるに違いありません。


戻ると、作者は1人、キャンドルの灯りを見つめていました。

私は邪魔しないように静かに席につき、そして、コーヒーをテーブルに置いた。


「ありがとう…私ね、利休の処刑は、本人も同意したものだと考えたの。」

作者はカップの中で溶け始めたロウに香油を()らす。

フランクインセンス…『乳香』とも呼ばれるそれは、古来から、神への捧げ物とされた香油です。

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