コンタクティ9
「うん…まあ、不人気でも、真面目に設定をして来たからね…、ひとっ通りの面白歴史エピソードは頭にあるわけでさ、利休と宝剣で考えるときにも、『草薙の剣』を考えたわ。」
作者はぶっきらぼうに話始める。
「はい。」
「『草薙の剣』については、オリジナルを探してる人はわりといて、オカルト雑誌にもたまに載ってたわ。
壇之浦で消えた…源平の戦いで紛失するんだけどさ、確か、信長も秀吉も平家の血筋っていってた気がしたから、この辺りで盛れると思ったのよ。」
作者はなげやりですが、私は楽しくなってきました。
あの短期間で、こんなに真面目に物語を作ろうとして下さったことに…まるで自分の事のように嬉しく感じたのです。
「しかし、信長の平家説は所説あるようですよ?」
私の言葉に作者はヤレヤレ顔でかえす。
「そう言うのはいいのよ。イベントと『猿酒』の読者が面白ければ、間違いとまでは言えないんだし、ただ、平家の血筋…そして、草薙の剣に関連しそうだと、私の読者がワクワクしてくれればね。」
作者はコーヒーを飲む。
「つまり、信長か、秀吉の祖先が、『草薙の剣』を保持していた…と、そういう設定なのですね?」
「ふっ…まあね、ここまで書いてれば、信長好きはピント来るわ。彼の氏神についてね。」
作者の言葉に嬉しくなる。
「劔神社ですね。」
ああ、二人で夏ホラーを作った時を思い出します。
「うん。織田家の氏神は福井県にあって、スサノウの大神を祀っているのよ。」
「確かに、タイムリーですね。」
「うん。どうやって本物の『草薙の剣』を手にしたかは知らないけれど…壇之浦で一度、血筋が途絶えた天皇家、そこに切り込む草薙剣と、それを使う武士としての信長、華かやで素敵でしょ?」
作者は少しリラックスして笑う。
「そうですね、朝廷はこの時、信長の出世について打診されていたらしいですからね。」
「そして、記憶が正しければ、光秀は、領地を取り上げられ、毛利に…出雲をやると言われて出陣したのよ。出雲…草薙の剣のゆかりの土地よね?」
「ふふっ。それでは…秀吉は信長の意思を継いで関白になった…とでも?」
「分からないわ…でも、『猿酒』の続編なら、そんな雰囲気が素敵でしょ?
そして、秀長と利休が草薙の剣を管理していたとしたら…秀長が亡くなって、なにか、利休が乱心するような事柄があってもおかしくないでしょ?」
作者は言い訳のように説明していますが、わりと面白いと思います。
「イベントに間に合わなかったのが残念でしたね?」
ああ、歴史のイベント用に書き上げられたら、どんなに素敵でしょうか?
「うん。でも、早めに諦めて正解よ。この話、エタの沼コースの話だもん(T-T)
これがあるから、歴史もんは怖いのよっ。」
作者は叫び、そして、残りのコーヒーを飲み干した。