コンタクティ8
静かな夜でした。
雨の音だけが部屋に響いていました。
作者は難しい顔で何やら思案中です。
しばらくして、私はバイオリンを取り出しました。
何か、素敵な曲を弾きましょうか…
私は妖精に合図をし、前奏を奏でました。
ペールギュントから『ソルヴェイグの歌』
これは、グリークの1875年にリリースした組曲です。
ペールギュントと言う人物は実在したようですが、これは劇の為にかかれた曲です。
ソルヴェイグと言う美しい女性がペールギュントを待ちわびる、物悲しい女心をうまく表現した一曲です。
私が一曲、弾き終わると同時に妖精は歌い始めました。
美しい声が…キラキラと霜となって部屋を舞いました。
気がつくと、作者もこの美声の妖精に釘付けです。
曲が終わると拍手をし、そして、私に笑いかけた。 「随分と美しい催促ね?」
そうでした。この歌はソルヴェイグが、旅に出たペールギュントを思う歌。
ノルウェーの美しい風景と共に妖精に似合うかと選曲したのですが…
「すみません…あの、冷えてきましたから、コーヒーはいかがでしょうか?」
私の言葉に作者は黙って頷く。
「に、しても…なんかロクでもないもん拾ったかも(-_-;)」
作者はホットコーヒーのカップを両手で包むように握りしめてボヤく。
「何を…拾ったと言うのでしょうか?」
こうなると、聞いてみたいのが人情です。
「ノストラダムスを探していたから、漢方とか、感染とか調べてたじゃない?」
「そうでしたね。」
「疫病関係で、牛頭天王についても何度か見たよね?」
「はい…確か、スサノウは後に牛頭天王と合祀されますね?」
「うん。それってさ、別に気にする話じゃないと思ったんだ。でも、今、気がついたわ。」
「何を、でしょう?」
「草薙の剣の正体。」
作者は渋い顔をする。
「草薙の剣の正体…それは利休と関係あるのでしょうか?」
私の問いに作者は困った顔でこう言った。
「どちらかと言うと…信長の方かな?」