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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
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コンタクティ7


急な夕立が窓を叩いています。

少し蒸し暑くなってきました。

私はクーラーボックスを開いた。中は豪華なロココ調のドールハウスになっていて、革張りの長椅子に座る吹雪の精霊が座っています。


「一曲、歌っていただけますか?」

私の問いかけに、精霊は細く長い右腕を優雅に私に差し出した。

私は、彼女を慎重に両手で包み込むと、窓辺にたたせた。

出窓に置いた小さな蝋燭(ろうそく)の明かりに照らされて、七色に輝くマーメイドドレスの彼女はとてもエレガントに見えた。


彼女は窓ガラスに合図をすると、滴る雨は霜へとかわり、美しい銀のステンドグラスになる。


精霊に宝石は要らない。

水は氷に…そして、彼女を飾るアクセサリーとして輝く。


ろうそくに宿る火の精霊は、溶けだした蝋で作り出したハープをつま弾く。


涼しげな音色が部屋に響き、吹雪の精霊が歌い始めた。

すると、みるみる室温が下がって行きます。


「『あなたが欲しい』サティねっ(>_<。)」

作者が叫びました。

「どうしましたか?」

近づくと作者は私を見上げた。

「来年は、明智小五郎デビュー100周年で、ついでに、サティの没後100年なのよ。本当ならさ、今ごろ、サティの曲に合わせた恋愛の短編とかを連発しなきゃいけないところなんだよね(>_<。)」

作者はそう言って悶絶する。

が、仕方ありません。

いつまでも、つまらない悪魔と遊んでいるのですから。


「そうですね。夏のホラーでも、そんな物語をお作りになってはいかがでしょうか?」

私、少し、いじわるです。

「簡単に…もうっ、でも、考えてはいるわよ。」

と、叫んでから、思い出したように渋い顔になる。

「何でしょうか?」

「いや、アニバサリーを意識しすぎはヤバイっておもったのよ。うん。」

作者は遠い目をして天井を見る。

仕方ありません。西条八十のデビュー100年、江戸川乱歩のデビュー100年…そんなものを扱ったからの未完の山ですから。


「まあ、とりあえず、利休の話を始めよう。」

作者は笑った。



「草薙の剣、三種の神器が利休の辞世の句の宝剣だとか、そんな話でしたね?」

私の言葉に作者は苦笑する。

「うん。まあ、あなたの村正説も興味深いけれどね。まあ、今回は、草薙の剣で話をするわ。」

作者の言葉を聴きながらコーヒーを置きます。


本日はアイスコーヒーを。ミルクチョコレートを添えて出しました。

さあ、どんなお話を始めるのでしょうか?

ワクワクする私の横で作者がアイスコーヒーを一口、それから話し出す。


「『猿酒』の続編…まではいかなくても…その雰囲気でのエンディングを味わえる、そんな短編を作ろうとしたの。」

作者は困った顔で私に笑いかける。

「すこし…オカルトの雰囲気で作る予定だったのですか?」

私は、『草薙の剣』の伝説を思い出した。

あの剣は、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)は、神話時代の剣です。

天津神スサノウが、出雲の国で邪神ヤマタノオロチを退治した時に手にいれたと伝えられ、古来から天皇家で現在まで受け継がれる国宝です。


「うん。利休なんて、商人の子じゃん?そして、兵士ではないから、剣ってあんまりイメージないからさ、もう、盛ろうと思ったんだ。」

「確かに、盛りますね。」

「あら、でも、それほど違和感のある話じゃないのよ?歴史を知ってる人なら、くすって、笑ってくれると思うの。」

作者はアイスコーヒーを口にする。

「確かに、『草薙の剣』には、様々な伝説がありますから。」

「うん。そうなんだ。あの剣は、壇之浦(だんのうら)の戦いで、安徳天皇と共に海に沈んだと…言われているのよ。」

「そして、現在まで、オリジナルは見つからない…のでしたね?」

「うん。現在、熱田神宮に祭られているのは伊勢神宮から献上された剣なんだって。

まあ、さ、この話も怪しげなんだよね…

スサノウが得た草薙の剣は、後にヤマトタケルが手にするんだけど…伝説によると、厠に入るときに邪魔だから桑の木に立て掛けたんだって。で、用を足して再び手にしようとすると、なんか、光を放って持つ事が出来なかったらしいよ。」

作者は額にシワを寄せて難しい顔になる。

「まあ、神話ですし、超常的な話はありますよ。」

私の慰めに作者は渋い顔をする。

「これ、マジでビンゴかも(>_<。)

しかし、こんなところで喚いても1円にもならないんだわ。」

作者は悔しそうにため息をつく。

「いえ、まだ、歴史のイベントも、大賞もありますから、ゆっくり話したらどうでしょうか?」

作者の肩に軽く手を乗せる。

作者は私の顔を恨めしそうに見つめながら、アイスコーヒーをイッキ飲みした。

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