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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
426/499

コンタクティ2


「大盛って何よ?」

作者はカフェオレを手に私を睨んでいます。


どこまでがギャグなのでしょうか?


迷いながらも私も答えました。

「『敦盛(あつもり)』です。」

「特盛?そんなに盛らないわよ。辞世の句で。」

作者は不服そうに私に渋い顔をする。

「ギャグも…やりすぎは引きますよ?『人生50年…』は辞世の句ではありません。これは幸若舞(こうわかまい)と言う室町時代からの演舞の平敦盛の一説で、信長が桶狭間の合戦前に舞った、と、言われています。辞世の句ではありませんよ?」

「ええっ(‾O‾;)ドラマで見たよ〜信長が踊ってたよ。」

ため息がこぼれました。

「ドラマはフィクションですよ…信長の辞世の句は『是非もなし』です。」

「ええっΣ(´□`;)それじゃ、克也みたいじゃん!」

作者は不服そうですが、時系列を考えれば、克也さんの方が信長の影響を受けた側です。

「それはともかく、『人生50年…』は、辞世の句ではありません。」

私の言葉に作者は苦笑した。

「桶狭間かぁ…確か、信長の名前が世の中に広がる初めの方のエピソードよね?

そう考えると…やっぱり、利休の句って、これにリンクしてる気がするわ。」

作者は少し考えるようにカップを口にする。

「そうですね。利休が信長と関係ができたのは1568年、桶狭間の合戦に打ち勝ち、信長が堺に武器の供給地とするために介入し、そこで利休は茶頭として取り立てられるのです。」

私の話を作者は黙って聞いていました。

「つまり、利休にしてみても『人生50年…』のフレーズは特別なものなのよね?

大成する前から処刑される最期まで。

だとしたら、やはり、この二つの句は対ではないかって気がするわ。」

作者の言葉に黙って頷く。作者は私に嬉しそうな笑い顔を向けました。

懐かしい…二人だけの世界に胸がときめきました。

「信長の半世紀の人生と共に語られる『人生50年…』そして、古希まで生きた利休の『人生70年…』それが対だと考えると、その後の恐ろしげな文句に意味が出てくるわ。」

「利休の句の宝剣で祖仏を殺すとかのあたりですね。それは信長の比叡山などの焼き討ちをイメージしたと言う事でしょうか?」

ああ、つい、言葉を発してしまいました。

作者は私の答えに軽く笑って頷きました。

「うん。信長は、うまく行かなくなった旧体制を壊すために、聖域なく破壊と殺戮を繰り返したわ。それは残酷な行為だけれど、彼らには意味があった事なのかもしれないわ。で、道半ばの信長の野望を、利休の死と共に終わらせる…みたいな。」

「利休が、ですか…」

なんとなく、理解できません。

「うーん…『自分で終わり』って感じがするのよ(-"-;)

なんかさ、ラノベとかだと、悪の巣窟に潜伏して、仲間もろとも破壊するような…」

作者も何度も首を(かし)げながら答える。

「ローファンですか…」

「うーん…いや、そこまで決まったファンタジーじゃなくて、ふんわりと、そんな感じ。鬼とか妖怪とかって、アウトローな人間の象徴だったりするじゃない?そんな感じかな…利休って、なにか、歴史的な橋渡しをした人のように感じるのよね…。

この死も何か意味があって、彼にとっては意義があるような。」

作者は困ったような愛想笑いを私に向けます。

「確かに、何かに向けてのメッセージ性はあったのでしょうね。

処刑だけでなく、戻り橋に首をされるのですから。

小説家なら、その辺りを拾いたくはなりますよね。」

そう、利休は処刑の後、一条戻り橋に首をさらされる。

秀吉の強い怒りを表しているとも言われますが、真相は藪の中なのです。

「うん。戻り橋だよ…この橋は、あの世とこの世を繋ぐ橋とも言われていて、安倍晴明とも縁があるんだ… この辺りで、遥希の物語が暴走し出して…まとまらなかったよ。」

作者のため息に…苦笑が漏れました。


確かに、『乱歩さま…』で、明智小五郎の物語を阿倍野区をモデルにした『新世界』で展開する話を考える遥希くんは、晴明をモデルにサブキャラを作ろうとしていました。

そして、信州の焼き物を紹介したい彼は、利休にも目をつけていたのです。


その二人の関連が…『お茶』のワードで繋がるのですから、作者の頭は混乱することでしょう。


「うん。晴明神社は色んなところにあるんだけど、大阪と京都のは有名なんだ。で、京都の晴明神社には利休もゆかりがあるんだよ。」

「確か、あそこの水はお茶に適しているのでしたね。で、利休が目をつけた。」

「うん…昔は量は決まっていたけど、汲ませてくれたよ。あれと宇治のお茶と菓子を買って土産にしたいと思ったもん。

今は、オーバーツーリズムで汲むのもむずかしそうだよね…。」

作者はため息をつく。

「そうですね。でも、行きたいですね。京都。」

私の答えを作者は少し寂しそうに笑顔で受けた。

「うん。剛が生きていたら…万博経由で行きたかったな、でも、来年なんて…絶対、混んでいて無理そうだよ(T-T)

みどりの窓口も大変そうだし…電車に乗れるかも心配だよ。」

作者は深くため息をつく。

「ふふっ。そうですね。では、また、二人で空想の京都を旅しましょうか。」

次の歴史のイベントは分水嶺(ぶんすいれい)。水源の境界線を意味しています。

戻り橋と共に、どんな物語を作りましょうか。


「はぁ…それよりも、遥希の方をなんとか…『乱歩さま』を動かさないと!2025年はすぐそこなんだから。」

作者は絶叫し、私は彼女の慰めにモンブランを注文した。

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