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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
422/499

春雨

その日の夜風は甘く桜並木を通りすぎて行きます。

ライトアップをされた桜が優しく私達を見守るように咲いています。


「本当に…色々、面倒よね…」

作者は桜を見ながらぼやきます。

「そうですね。」

私は相槌(あいづち)を打ちながら、少し、楽しんでいるのです。

面倒事は、大変ですが貴女を連れてきてくれるのです。


「それにしても…面倒になったわね。」

作者は桜を見上げながらボヤいた。

「それほどでも…ありませんよ。」

その横で私が呟く。


貴女が私を気にかけてくださるなら…

私には大抵の物事はたいした事では無いのです。


「そう?はぁ…でも、やはり、扱いは面倒よ。

遥希は郷土資料部で…私はMr.都市伝説に未来のヒントを貰って物語を作り始めていたわ…

だから…遥希が焼き物に興味を持ったときから、私も調べずにはいられなかったのよ。珠洲焼を(T-T)」

そうでした。

中部地方で焼き物や食器を探すなかで、輪島塗と共にヒットしたのが珠洲焼でした。


珠洲焼は、中世の日本を代表する焼物で、古墳時代からの技術を受け継いだ焼物とも言われています。


「そうでしたね。でも、それがどうかしましたか?」

「するわよぅ…ネットって、勝手に好きな事を言えるようで、配慮が必要なんだもん。

いままでは気にしてなかったけどさ、でも、私に向こうが取り上げてほしくない場合もあるじゃない?」

作者は再びため息をつく。

「そんな事は…一次選考を通るか、評価が3桁行ってからにしませんか?」

ため息がうつりました。

そう、確かに、色々と配慮の必要な世の中ではありますが、普通に生きていて、著作権やその他権利に抵触しない場合、私達クラスの作家にイチイチ文句が来るものでもありません。

「そうだけど…遥希は、何とか地元をアピールしようと、町おこしを考えていたのよ。

で、大阪で特産品を売る話を考えていたわ。

私は遅筆で…この話は3年前から書いてるし、今回の災害とは関係ないけれど…なんか、話題が欲しくて書いてるみたいで嫌なんだよね。」

作者は渋い顔をする。

「では、やめましょう。遥希くんは富山県のどこかの学生ですから、ボツにしたらよろしいのではありませんか?」

私の台詞を聞いて、作者は頬を膨らませる。


「簡単にいわないでよ…3年よ、3年。色々やりながら、少しずつ焼き物を調べていたわ…

その間、遥希は、一生懸命、町おこしを考えていたのよ?

その気持ちと…この現実が…私の気持ちを混乱させるのよ。」

作者は三度(みたび)、ため息をつく。


「雨…でしょうか?」


ふと、水滴が頬に触れ、私は自分の上着を作者にかける。

「春雨よ…これくらい平気よ。」

作者は私に上着を返して、笑った。

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