モーニング
朝の静かな雨に起こされて台所へと向かうと、既にコーヒーの薫りが漂っていました。
ミズキです。
喫茶店のマスター役の彼は、そつなく朝食を用意してくれました。
180cmの細身の彼はカフェ・エプロンを骨太な腰骨に引っ掻けるように身に付け、明るく笑って挨拶をする。
「おはようございます。」
優しげな声につい、笑顔になります。
彼は、私を模して作ったと作者は言いました。
でも…私は、こんなに甘いマスクはしてません。
「おはよう。今日はキリマンジャロかな?」
私の質問にミズキは無防備な笑顔を返す。
「はい。お好きだと思いまして。」
ミズキの言葉に苦笑します。
基本、コーヒーは、単独品種より、ブレンドの方が美味しいとされています…まあ、人それぞれで、そんな話をコーヒー好きに使用ものなら、コーヒー談義に小一時間は捕まってしまいます。とにかく、私は、各マスターの絶妙なブレンドが好きなのですが、キリマンジャロだけは、ブレンドよりも、単独が好きなのです。
キリマンジャロは、タンザニア地域の山の名前にちなんでいます。300年前から栽培されていた…とも言われていますが、本格的に栽培が始まったのは19世紀と言われています。
ただ、1人、私だけ…
キリマンジャロは、カップの中で気高くそう、主張しているようです。
「そうだね。ありがとう。」
私が席に座ると、ミズキはコーヒーのカップをテーブルに置き、トーストを焼き始めました。
目玉焼きを1つ。レタスを添えて。
ミズキは手際よくモーニングプレートを作ります。しばらくすると、モーニング・プレートを両手に、ミズキが席につきました。
男二人で…と言うより、人形のように美しい男と向い合わせで朝食を食べるのは、なんだか不思議な気持ちがします。
「さて、物語のプロットを考えようかね。」
私はミズキに声をかけた。