デザート
作りたてのアップルパイに生クリームをラムレーズンと共に添えました。
本日は、キャラメルフレーバーのアッサムをホットで。
BGMは…いいえ、必要はありませんか…
作者は、来てくださらないのだから。
いつもの調子で美しく飾りあげたテーブルを、私は悲しく見つめた。
全く…あの作者は!
私が物思いにとらわれている間、ミズキはすっかりテーブルを整えて、私の為の椅子を引いてくれました。
静かに…曲が流れてきました。
『なき王女の為のパヴァーヌ』ラベルの曲ですか…
邦題では、死んでしまった王女の為の舞曲と誤解されそうですが、ラノベ風に大をつけるとしたら、
『ルネサンスの姫様の為に近代の俺、舞踏曲を作ることにしました。』
と、いったところでしょうか?
今はなき、ルネサンスの姫君に捧げるパヴァーヌ
まあ、そんな感じなのでしょう。
この曲は、ルネサンスの姫様ではなく、作曲したラヴェルによって公爵夫人、ウィレッタに送られました。
「素敵な選曲ですね。」
私は椅子を引いて待つミズキに声をかけた。
全く…彼には私がどのように見えているのでしょうか?
「ありがとうございます。」
ミズキは機械的に例を言うとお茶を入れる。
いつもは…私が作者の為にする仕事。
あの方は…まだ、向こうで時間をかけているのでしょうか。
考えるとモヤモヤしますが、そんな暇はありません。
欲しいものは、実力で取り戻すのみ!
とにかく、遅れている物語の再開の準備をしなくては行けません。
これからイベントもある現実恋愛の未完『乱歩さま』の考察を進めましょう。
私は向かいに座るミズキを見た。
ミズキは上品に紅茶を一口飲むと、落ち着いた笑顔で私に答えた。
「なんでしょうか?」
「喫茶店の短編の設定を考えるよ。テキスト化して保存して。」
私の言葉にミズキは笑顔で「イエス」と、答える。
「時代は1920年代風味。場所は大阪をモデルにした異世界。都市の名前は『新世界』スチームパンクな世界で作ろうと思う。」
「イエス。」
「君はヒューマノイドロボに設定。これによって、少女との二人暮らしの不快感が軽減される。」
そう、作者は…SFが好きですし、ミズキもまた、手塚治虫先生の夏アニメを懐かしんで作られたキャラクターなのです。
少し、背伸びをするくらいでなくては、作者をあの悪魔どもから奪うのは難しい。
「イエス。」
「これによって、ヒロインの伯父はロボット工学の研究者に。1928年に大阪毎日新聞が、東洋で初めてのロボットを出展しているからね。この辺りを説明しながら話を盛り込もう。」
私は、この時出展された『学天則』の話題にトキメク作者を思った。
制作者は西村真琴先生。
1956年に亡くなっているので、細かい設定を借りてくる事は可能です。
先生は生物学者でもありますから、『パラサイト』の新たなアイディアも貰えるかもしれません。
ああ、作者の楽しそうな笑顔が浮かびます。