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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
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ディナー3

何をさせたいのか…と、作者は私に質問したまま消えた。


年越しと正月は、私と一緒だったのに…

とうとう、正月も終わりではありませんかっ!


辛いもの思いに、作り始めたリンゴの砂糖煮がクックッと文句を言うように沸騰を始めました。


あの悪魔どもめ!


私は怒りの気持ちを振りかけるようにラム酒を鍋にいれ、フランベを始めました。


青く燃える炎が…メラメラと燃え上がる様子に、私から作者との正月を奪った悪魔どもが浮かび上がってくるようです。


ガシャッ。


鍋の蓋でそれを封じ、それから、作者をこちらに呼び込む魔法に思いを馳せます。


ローストビーフは、既に使いました。

そして、メインの次はデザートと、相場が決まっているのです。


最高のアップルパイで…私は作者との楽しい日々を取り返す予定です。


「時影さん、生地ができました。」

ミズキが家電製品のようにパイ生地の完成を知らせた。

「それでは、冷蔵庫にしまってください。

少し、休みましょうか?ミズキさん、コーヒーをお願いします。

今日はキリマンジャロのブレンドで。」

私は台所を軽く掃除し、手を洗った。




テーブルに座ると、私はノートを取り出した。


私はストーリテラ。

作者と同じく、物語に干渉できる人物です。

しかし、物語を読者に楽しんでもらうのを優先する義務も持ち合わせています。

メフィストのように…恥ずかしげもなく、他の物語に突入などという、下品な行いは出来ません。


今頃、作者は、終わらない話を何とかしようと努力されている事でしょう。


努力は…されているのでしょうが…


思わず、手にしたペンに力が入ります。

それにしても…1920年代の法王の話なら、こちらで私としてもよろしいじゃありませんか!


いえ、(むし)ろ、この場合は、私と考察するのが先と言うものです。


少し、興奮してしまいましたが、ミズキがコーヒーを持ってきて、我にかえります。


「あなたもお座りなさい。」

私に言われてミズキは座る。

作者以外の人物と話をするのは…少し、違和感があります。

AIのミズキは、姿勢良く座り私を見つめる。


「さて、我々も行動を起こさなければ行けません。」

私はミズキにコーヒーをいれた。

AIのミズキには、基本、コーヒーは必要ありませんが、1人で飲むのも味気ないですから。

「はい。」

ミズキは、定型句のように返事をする。

ため息が出ます。さて、AIをどう説得しましょうか?


「ミズキさん、春風さんに会いたくはありませんか?」

私はデビューまもなく書かれた、彼の物語のマドンナを思い出した。


ミズキは静かに微笑んで、

「会いたいです。」

と、答えた。


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