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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
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ディナー2

メインディッシュがやって来ました。

本日はクリスマスイブ。

作者の大好きなローストビーフ。

暇がありましたから、添え物のマッシュポテトも丁寧に作り上げました。

ミズキが、静かにそれを置きます…

ああ、作者の笑顔が咲きました。


「凄い!ローストビーフじゃない(>_<。)」

作者の嬉しい悲鳴が心地よい。

タイミング良くミズキがノンアルコールのスパークリングワインを開ける。


ぽん!


軽快な音と共に、テーブルに飾られた花が歌います。

紅色のシクラメンの…ため息のような恋歌…


それを聴きながら作者は青くなりました。


「どうしました?何か、気に入りませんでしたか?」

心配そうな作者に、不安になります。

やっと会えたのに…

あまり、会えなくなったのに…

そんな悲しい顔をさせてしまうなんて!


私は…どんな顔をしていたのでしょうか?

私の顔を見た作者が驚いた顔で叫びました。

「え?別に!えっ…(°∇°;)」


混乱する作者の横にミズキが立つと(うやうや)しく挨拶をし、歌い始めました。


『きよしこの夜』

フランツ・クサーヴァーが作曲したクリスマスキャロル。

私達には思い出のある曲です。

この曲の話をしたことを…作者は思い出してくれるでしょうか?


「『きよしこのよる』かぁ…確か、著作権切れてたわよね(>_<。)」

作者はどこからか、ノートと鉛筆を取り出す。

「どうしたのです?ローストビーフを前に。貴女らしくない。」

私の質問に作者は涙目で睨む。


「だって…、クリスマスなんだよ…もう、ネット作家は掻き入れ時なんだから。クリスマスはね、恋愛ものが閲覧されるんだよ。

本来なら、ここで小銭を稼ぎたかったけど…今年も無理だよ。」

作者は頭を掻き始め、私は思わずため息がこぼれました。

「まずは…ディナーに集中しませんか?

物語についてなら…私とミズキが話をうかがいますよ。」

(つと)めて優しく声をかける。

「有難う。そうだね…こっちも放りっぱなしだし…まずは落ち着かないとね。」

作者はノートと鉛筆をしまうと背筋を伸ばす。

我々はシャンパングラスを持ち上げ、笑顔でクリスマスを祝う。


クリスマスは、古代からの冬至の祭りが変化したものだと言われています。


キリストの誕生日とも言われていますが、イエスの誕生日には諸説あり、春分点が始まりだと言う説を我々はとっています。


地球は傾いて回る独楽(こま)のようなものですから、少しずつ春分点は動いて行くのです。

それを歳差運動と言います。


我々は、暦のはじめの春分点の星座が歳差運動で動いたことと、冬至の祭が重なったのだと推理したのです。


「はい。ローストビーフ、よい肉で作りましたから。」

私の顔を見て、作者は少し驚いて、それから恐縮した笑いを浮かべた。


「そうか…ありがとう…嬉しいよ。なのに、私はプレゼントも無くてごめんねっ(T-T)」


嗚呼…その顔だけで十分です。

貴女が私を忘れずにいてくれてるのがわかりますから。

「いいえ。もう、頂きましたよ。」


それは本当に、心を込めた言葉でした。

が、作者は脅迫された人のように顔を歪めてため息をつく。


「そうか、そうなんだぁ…で、何をさせたいのかな?時影君!」

やけっぱちに叫ぶ作者に、作者が、私がプレゼントの催促をしたのだと誤解しているのがわかりました。


何もいらないのですが…ちょっぴり甘えてみたい衝動にかられてきました。


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