アペリティフ2
「ジントニックをお願い。」
調子にのる作者の願いにため息をつく。
「アペリティフ…食前酒ですよ?淑女を気取るなら…軽く、上品な一杯を頼むだけにするのがよろしいですよ?」
「大丈夫よ〜これ、酔わないじゃない。」
作者の内弁慶が発揮されます。
普通のカクテルは、いつも警戒しかしないのに。
「酔わなくても…2杯も大きなグラスの飲み物を頼むのは…美しくはありませんよ?」
私の困った顔を見て、作者もシブイ顔になる。
「そうね…なんか、ミステリーの高級レストランのバーとか想像すると、私のようなキャラが殺されちゃうのよね。」
作者は悲しい顔になる。
「殺されるとは限りませんよ?冤罪の犯人として捕まる役もございますから。」
「ございますって…どっちにしても嫌な役よね…そうね、もう、やめとくわ。」
作者は悲しそうにため息をつく。それを見ると、私の心を揺らいでしまいます。
仕方ありませんね。
私は、底の浅いカクテルグラスを取り出し、シェイカーにライムジュースをいれる。
そこにグレナデンシロップを。
テンポ良く撹拌してからそれをグラスに継ぐと、最後に気持ち、ラム酒を数滴。作者に差し出した。
「低アル『バカルディ』です。」
作者はグラスを手にしながら複雑な顔をする。
「『バカルディ』かぁ。確かに、このカクテルは、バカルディを使わないわけにいかないわよね?」
作者はそう言ってクスクスと笑う。
「はい。カクテルの名前、『バカルディ』とは社名ですから。バカルディのラムを使わない場合は、名乗る事は出来ません。」
「そうね。バカルディ・ラムを使わないときは、『ピンクダイキリ』になるんだっけ?」
作者はそう言って軽く、グラスを近づけて香りを確かめる。
「はい。」
「ラム酒って、サトウキビを原料にしたアルコール度数が高めのお酒なのよね…でも、私みたいに甘党だと、スイーツなんかにも使われてるから、体が警戒しないで飲めちゃったりするから気を付けなきゃいけないのよね。」
作者は深くため息をつく。
「そうですね。昔も、酒の絡む場所は、あまり良いものではありませんでしたが、現在は、それ以上に乱れていますから。」
私は、近年の酒がらみのニュースを思い出す。
「ついでに、デートドラックとか、反則技も登場するし、こうなると、女性のお酒の場も、色々制限されてくるわよね。」
作者は難しい顔になる。
「男性同伴…とかですか?」
「うん。今は、被害者が秘密にしたくても、ネットの拡散とかあるし、間違いは出来ないもの。」
作者は深くため息をつく。「君子危うきに近寄らず。ですね。」
私の言葉に、作者は恨みがましくバカルディ・ラムのボトルを見た。
「バカルディ…キューバのお酒よね(T-T)
キューバ。もうっ、私、キューバ危機の話とか、してるんだよぅ。もうさ、頭、無茶苦茶だよ。」
作者はそう言いながら、『バカルディ』をあおる。
そして、諦めたようにこう言った。
「嫌にはなるけど…お酒はうまいよね。」