カレー
本当に、こんな事が許されてよいのでしょうか?
私はジャガイモの皮を剥きながら思いました。
作者が…私の作者が、事もあろうか、ぽっと出のベルフェゴールの入れたお茶に涙を流したのですっ。
わ、私が5年、横でいれ続けて、そんな反応は一度もありませんでしたのにっ。
私はジャガイモの皮を剥き終わると飴色玉ねぎの様子を確認する。
メフィストが消えたと思ったら、次は、ベルフェゴール。
全く、悪魔というキャラは油断がなりません。
でも、本日のディナーは私がとりました。
おいしいカレーで、作者の胃袋を鷲掴みにしなくては!
カレーは、日本の家庭風味をチョイス。
福神漬けも忘れては行けませんね。
私は鍋で具材を煮込みながら茹で玉子を作り始めました。
茹で玉子。それはカレートッピングの最終兵器。
デザートは、フルーツヨーグルトのアイスがけ。
もう、完璧です。
暖炉に薪をいれ、暖かくし、柔らかいアルコールランプの灯りと食卓のろうそく。
あとは、作者を待つばかりです。
「ごめん、遅れて。」
作者はヨレヨレのジーンズにボサボサの髪ですが、そんな事は気にしません。
スマイル!スマイルです。
「お疲れさまです。何か、ありましたか?」
私は作者の肩に手をかけて、一瞬で身なりを整えました。
少しくすんだ青いベルベットのワンピースは、ハイウェストに。
これでゆっくり食事が楽しめるはずです。
「何もないよ。相変わらず話が終わらないだけで。」
作者は、久しぶりのスカートのすそを少し気にしながら話す。
「ミステリー大賞ですね?」
「うん。キャラが暴走していてね。
こう言うの、あんまりないけど…と、言うか、作者が答えに困る事、聞く?」
作者は文句を言いながらテーブルに向かう。
「それでも…美少女とのティータイムは、楽しそうですけれど。」
私は指をならして子供シャンパンを取り出した。
それから、作者が文句を言い出す前に景気よく栓を抜き、優雅にワイングラスに注いだ。
「やだ、綺麗!マリンブルーなのね。」
作者は子供のようにはしゃぎます。
ふふっ。作者を喜ばせる演出にかけて、私以上の存在などいないのです。
「すぐにカレーをお持ちしますね。」
嬉しそうな作者の笑顔に満足しながら私はカレーをとりにゆく。
久しぶりのディナー。
二人きりの楽しい時間の始まりなのです。