ディナー5
舞台のグランドピアノの前に座り、私は演奏を始めました。
曲は『黄金狂時代』チャップリンの同名の映画の曲で、チャップリンが作曲しました。
私が演奏する奥のスクリーンでチャップリンの食事シーンが流れています。
映画『黄金狂時代』は、1925年リリースの白黒映画で、ゴールドラッシュにわくアラスカを舞台に繰り広げられる物語です。
冬の山を舞台に、飢えに苦しむ男たちの様子がコミカルに描かれて行きます。
この映画には、有名な食事のシーンが登場します。
それは、チャップリンの演じる金鉱探しの男が、あまりの空腹に自らの靴を煮て食べるシーンです。
この映画のためでしょうか、時に、年配の男性は食べられる靴の話をしていました。
『フェラガモの靴は食べられる』
これは、現在、通用するかはわかりませんが、靴の革を食べるためには、加工方法が重要です。
人体に有害なクロム加工をしたものは食べられません。
タンニン加工をした革は食べても問題は少ないようですが、土の道を何年も歩き、汗を吸い込んだ革靴なんて、加工はどうあれ、食中毒の可能性がありそうです。
チャップリンは、もちろん、靴に似せたフェイクの靴を食べましたが、撮影中、下痢に悩まされたとか…
歴史と食事…
これも、調べると、想像も出来ないような物語が、まだまだ発見出来そうですが。
まあ、今は、『黄金狂時代』のBGMを演奏するのに集中しましょう。