ディナー
本当に参りました。
いきなり、作者がディナーに来るなんて!
何の準備も出来ないじゃありませんか!
私は時計を見て慌てました。
現在、5時。あと1時間で作者が来るのです。
部屋は綺麗にしています。でも、食材のストックがありません。
勿論、最低限の食材はありますが、久しぶりの作者とのディナーに見合う食材は用意出来ていません。
困りましたね…どうしましょうか?
とりあえず、冷凍庫のストックのリストを調べました。
牛肉が少しあるようです。
今が旬の椎茸…他、キノコ類があります。
私は牛肉を解凍し、薄切りにしてキノコと炒めることにしました。
前菜は生ハムとチーズ
スープは先日作ったスープストックを使って、
パンは本日買ってきたフランスパンを、上質のオリーブオイルとバルサミコ酢で。
ゆで卵を使って、サラダ風味のショーとパスタ。
デザートは…
目まぐるしく動いていると、勝手口の戸が開きました。作者です!?
ち、予定より30分も早い(゜Д゜)
慌てる私の前に作者が紙袋を揺らして登場しました。
「もう!やっぱり、料理作ってる。」
作者は私を責めるように睨む。
「当たり前ですっ。ディナーですよ?」
そう、ディナーなんて、数ヵ月ぶり。
いつも、ちょっと来ては、忙しそうに帰ってしまうのです。
ゆっくりと、ディナーを楽しむなら、それなりの料理がなければ、話にはなりません。
「だから、今日は、デパートデパート買ってくるってメールしたじゃない。」
作者が不満そうに私を見る。私はそれを無視して紙袋の中身を見る。
サンドイッチと酒のつまみ程度なら、また、すぐに帰ってしまうでしょ?
「チーズとサラダ…トンカツですか?これでは栄養が偏りますよ。」
ほら、やっぱり。
私は少し悲しくなります。 が、ここでめげては、いつ作者が来てくれるか分からなくなります。
美味しい料理…楽しい時間を長引かせる料理を作らねばなりません。
「野菜あるでしょ?それに、これ買ってきたし(^-^)」
作者が肩に掛けた少し大きめのバックからワインを取り出した。
「冷えてるよ。もう、これがあれば良いじゃん。」
作者の屈託のない笑いと、保冷剤入りのバックに寝かされて運ばれてきたワインに呆れる。
「どちらにしても、移動させたなら、少し冷蔵庫で休ませないと。」
私は知らん顔でワインを冷蔵庫に入れると料理を作り始めました。
作者は呆れたように私を観察していましたが、しばらくすると私を手伝い始めました。
「私に任せて休んでいてください。」
私の言葉に作者は苦笑する。
「じゃあ、ワインとトンカツ…」
「いえ、では、お湯を沸かしてください。」
私達は、料理を楽しみ、 そして、テーブルに料理の花を咲かせたのでした。