悪霊8
海の見えるキャンプ場に車を止めて私達は、ベンチでランチを始めました。
ダイナミックな日本海の秋の波を見ながら、作者はカツサンドを頬張りました。
私は、作者にミルクティの入った水筒を渡した。
そろそろ、アッサムのシーズンです。
今年は暑いですが、季節は確実に変わって行きます。
「さて、話そう。乱歩を片付けて、『乱歩さま』を何とかしないとね。」
作者はため息をつく。
「ええ。3年たちますからね。清貴くんを何とかしませんとね。」
私は笑顔で答えた。
いつも、成績に結び付かない活動の中、人気ジャンルに生きたいはずなのです。 でも、止めた作品を再開する…そう決めた作者に嬉しくなりました。
「うん(T-T)もうさ、色々、他の話を優先していたから、夜な夜な清貴が文句を言うんだよ…。
3年も考えてると、キャラが出来上がるんだろうね…。」
作者は軽くため息をついて私を見た。
そんな顔で、見ないでください。
私は、思わず、水筒を口にもって行く。
私は創作活動から5年。
知り合ってから…長い時を貴女と過ごしてきたのですから。
貴女には…私は、ただの狂言回だとしても…
私は…
「まあ、乱歩だよ(>_<)あの人、思ったより、複雑で、色々、知らなかったことイッパイだったわ。」
作者の叫びに我にかえる。「『フラッシュ・ゴードン』とか?」
少し意地悪に聞いてみる。
「うんっ。私はクイーンのイメージだもん。」
作者はほほを膨らませて不満そうに言う。
『フラッシュ・ゴードン』は、同名の映画のテーマソングとして、イギリスのロックバンド、クイーンがリリースしました。
1969年のアポロの月面着陸以来、SF、SFXの人気が世界的に高まり、ボイジャーの送ってくる惑星の画像、新しい映像技術に人々は未来を夢見たのです。
作者に限らず、1930年代のイメージはあまりないのだと思います。
「それを言うなら…『キャプテン・フューチャー』も1940年代リリースですよ。」
私は同アニメのテーマ『夢の船乗り』を思い出しながら笑った。
「そうね、そんな話もしたわね(T-T)
本当に…あの頃の動画を見ると、世界が随分と様変わりした事に気がつくわ…」
作者はため息をつく。
「まあ、そんなに落ち込まないで。」
「落ち込んではないわよっ。大体、私が混乱するんだから、同世代から上の人にだって、このエピソードは懐かしくも新鮮に写るはずよっ。
ネタ的に金になる気がするもん。
500円。とにかく、ここまではためないと、格好つかないもん。頑張るわよっ。」
作者の水筒を握る手に力が入ります。
「そのいきですよ。」
私は持ち上げる。
「うん。それにさ、今回、また、くだらない謎が増えたんだよね。
持ってる資料だと、1934年に『キャプテン・フューチャー』の上映がされた事になってるのよっ。
でも、wikipediaでは、新聞掲載が1934年になっていて、混乱したわ(T-T)
もう、これがあるから、資料提示は悩むのよっ。
まあ、一次選考すら通らなきゃ、そこまで書かなくてもいいや。って気がするわ。」
作者はなげやりにボヤく。
「そういう適当さが、一次のハードルをあげるのですよ?」
ため息が出ます。
「仕方ないでしょ?私も、著者も、一次選考手前で恥ずかしい思いはしたくないもん。それに、これくらいなら、ネットで質問すれば誰か答えてくれると思うし。」
作者は面倒くさそうに口を尖らせる。
「じゃあ、貴女が質問したらどうなのです?」
と、藪をつついてしまい、作者が威嚇する蛇のごとく睨んできます。
「嫌よ(///ー///)そんな質問して、見ばれしたらもう、立ち直れないもん。」
赤面する作者に笑いが込み上げました。
「そうですね。『フラッシュ・ゴードン』についてなんて、質問する人は…早々いませんからね。」
「もうっ、笑い事じゃないわよ…。あー、もう、乱歩、乱歩の話しよう。」
作者が赤面しながらノートをとりだし、私は秋の海岸の潮風を心地よく体に受けながら、のんびりとした休日を楽しみました。