悪霊4
爽やかな秋の空が広がります。
今日は美しい秋の海岸を作者と散歩する事に。
作者は黙って、輝く海を見つめながら歩いて行きます。
私も、そのやや後ろについてある来ました。
少し、強い海風が、心地よく体に当たります。
「お茶にしませんか?」
私は、良い感じの流木を見つけて言いました。
作者は笑って従います。
本日は、冷たいダージリンをストレートで。
小さなマドレーヌと一緒に水筒を渡しました。
「ありがとう。」
作者はそれを受け取りながら、銀色に輝く海をみつめました。
「そろそろ…秋イベントが始まりますね。」
ぼんやりとそんな事を言うと、作者が水筒を両手で握りしめる。
「うん…もう、秋イベントがはじまるよ。私は、悪霊が終わらないのに(T-T)」
作者は渋い顔をする。
「まあ…参加しなくても…良いとは思いますが。」
私は苦笑する。
「でも、考えるだけは考えるわ。今回、食事でしょ?お菓子と作るのもアリでしょ?メアリーの話をしても…ベアトリーチェの話をしても…春枝の話にしても…とにかく、止めてる作品を一時的に動かせるもの。」
作者は少し、悲しい顔をする。
初めての連載を完結させようとした努力の結果が、複数の未完なのですから、仕方ありません。
「そうですね。メアリーなら、小さな頃、フランクをお茶に誘う話も素敵ですし、ベアトリーチェなら、イタリアやローマのお菓子について語るのも。
春枝なら、家守と素敵な夕食を作る話も良いですね。たまには、日本の秋の食事について語りましょうか。」
私は、各物語を思い出して楽しくなる。
「そうね…十五夜のエピソードとか楽しそうだわ。それなら、トピラフの話も良いなぁ…。」
作者も嬉しそうに笑う。が、すぐに暗い顔になる。
「でも、まずは、悪霊を何とかしないと!今度は『魔法様』の登場よっ(>_<。)」
作者は渋い顔になる。
「三田光一ですね。」
私は、月の裏側を念写した一人の奇術師でサイキッカーを思い出す。
「うん…まさか、1933年の同じ年にやってるなんて、信じられないわよ。もうっ。」
作者はふて腐れる。
「確かに、克也さんは優秀みたいですね。」
私は、執筆中の主人公を思って笑う。
「うん。そろそろ、終わりに近いんだけど、奴が脱線しないか、気を付けないといけないんだよ。」
作者は疲れた笑いを漏らす。
「そうですね…でも、福来友吉に話をもって行かなければ行けませんから、よかったじゃないですか。」
一応、励ます。
「うん。まあ、ね。まあ、これ以上はここでは話さないわ。」
作者はアイスティを口にする。
「今日は、ドイルの話をするのですからね。」
そう。乱歩は、『悪霊』で、ドイルと、英国の心霊実験について語っているのだ。
「うん。『悪霊』には、実在したオカルト研究家が記されてるわ。
アルフレッド・ラッセル
ウィリアム・ジェームス
ウィリアム・クルックス。
でも、彼らについて、乱歩は作品で言及してないわ。
この辺りを少し、掘り下げてみたいの。
そうする事で、作品のオカルト色を強めて、読者の興味をひきたいわ。」
作者の目が輝いた。