奇なり…
静かな午後、クーラーの風音だけが忙しく歌います。
作者はショボくれながらケーキを食べていました。 私は向かいに座りながら、なんとも言えない暗い雰囲気に浸りながら紅茶をいただいています。
本日はセイロン…
昔馴染みのイエローバック。
あの人は、落ち込むとき、欲しがるお茶なのです。
作者は最近、寝てばかりいます。仕事が忙しいらしいのです。
でも…たまには楽しく話をしたいと思ってしまいますが、ここは何か、安らげる曲でも弾きましょうか。
私はピアノの前に座ると、何を演奏しようか、思案しました。
『Lovin'you』を。
せつなげで、優しい音楽に合わせて、クーラーの冷気を纏ったシルフが風のバイオリンを合わせてきます。
耐熱性のガラスのティーポットを涼やかに響かせながら、水の妖精がアン・ルイス版の歌詞を歌います。
人に恋をして、想いが届かないときは消えてしまう…そんな伝説を持つ彼女の歌声は、恋する切なさと甘さを部屋に振り撒きます。
あなたが落ち込むと、
私も悲しくなります
私もピアノの音色に切ない気持ちを紡いで行きます。
作者は…気持ちよく寝てしまいました。
まあ、いいでしょう。
私も気持ちがのって来ました。次は何を弾きましょうか?
『LALALA means I love you』なんてどうでしょう?
デルフォニックスの名曲です。
マイケル・ジャクソンもジャクソン5の頃、カバーしています。
様々なカバーがあっても、この曲に込められた思いは同じ。
あなたを大切に思っています。
私はそう解釈をしています。
「はぁ…ごめん。また、寝ちゃったよ(*_*)」
作者が曲の終わりに拍手をしながら謝りました。
「おはようございます。ミントティーはいかがですか?」
私は寝起きの作者に笑いかけます。
「ん…たまには、私が作るよ〜」
作者は大きなあくびをしながら立ち上がる。
私はすぐに追いかけました。
「まあ、さ、最近、本業がね、忙しくてさ。」
作者はそう言いながら、炭酸水を飲む。
結局、お酒のつまみのようなものが並びました。
「ご苦労様です。」
炭酸をビールのように継ぎ足す。
「うん。仕事もそうだけど、今回、ほとんど挨拶もいないような人とトラブルになってね、その人、半年前から、私を憎んでいたらしい(´-ω-`)」
作者は深くため息をつく。
「半年…」
「うん。まあ、誤解もあるんだけど、それにしても…人の恨み辛みって怖いわ…」
作者は渋いかおをする。
「で、大丈夫ですか?」
「まあ、誤解だと説得したよ。まあ、半信半疑みたいだけれど。怖かったけど、こんな経験、普通しないからさ、色々疲れたわ。」
作者は暗い顔をする。
「何か、私に出来ることはありますか?」
と、聞いてはみても、私に現実の作者を守る術はありません。
「うん。話を聞いてほしいかも。普通の地味な生活してると、こんな風に知らない人に恨まれる事は無いからさ、貴重な経験だよね。王様とか、人気アイドルとか、こんな人達は、複数の負の感情に囲まれてるわけなんだよね…
まあ、知らない人に助けられたりもするんだろうけど。」
作者は眉を寄せながら渋く笑う。
「無理…しないでください。」
「ああ、大丈夫。もう、喧嘩とかしないだろうし…」
「け…喧嘩(-_-;)」
「いや、口喧嘩?まあ、少し、声があらげた位だよ。ここに来て、日頃の性格態度が大切だと思ったわ。
やっぱり、王様とかは、余程、善人じゃないとやれないもんだよね。
歴史物を書く色んな糧になったわ。」
作者は笑う。
「笑い事でないですよ。」
私の言葉に作者は嬉しそうに笑い、少女のように抱きついてきました。
私は作者を抱き締めて…その温かさに喜びを感じる。
「怖くは…なかったですか?」
私の質問に作者は答えなかった。寝てしまったから。
私はしばらくしてから、熟睡を確認してソファーに作者を寝かせた。