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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
358/499

雨にも負けず

今年も終わりに来て、作者は、話を書き始めていました。


まあ、正月は少しは進めないと、終わりませんが。

「もうっ、なんか、書くたびに色々、拾って話が進まないわ(T-T)」

作者が泣きそうになりながらわめく。

「それをまとめるのが、小説家ではありませんか?」

私は呆れながら言った。

「だって…宮沢賢治。童話で引っ掛かったんだもん(T-T)」


そう、ぬいぐるみの物語を書こうとして、偶然、宮沢賢治の本を引っ張り出して混乱しているのです。

「見つけても…放置したらよろしいでしょ?」

私の言葉に作者は不機嫌にボヤく。


「でも…作家と名のつく活動をしていたら、きっと、足を止めずにはいられないわ。

宮沢賢治はね、今から100年前の1922年に本を出版したのよ。


それは、生涯ただ一冊の出版本なんだって…


なんか、惹かれずにいられないでしょ?


私、宮沢賢治は、教科書に登場するくらい有名な作家…と、しか思わなかったから。


でも、出版はただの一回…結局、作家では食べてはいけなかったのよ。


それをきいたら、賢治の悲しみがぐっと込み上げてきたわ。


一回出版で泣かず飛ばすって、なろうでもよくあるもの。

それでも…一回でも出版が決まる喜び…

その後、小説の評価に悩み、自分の才能を疑ったり…。


この気持ちは…きっと、作者になった人しかわからない気持ちだと思うの。」

作者は、そう言って目を細めた。

「確かに、そうかもしれませんね。」

私は、自分が落選した大賞受賞者を眺めながら、ボヤく作者を思い出していた。

憎らしさと、エール。


真逆の気持ちを秘めながら、何度、それらを見つめたことでしょうか。

「うん。悲しいし、勇気も貰えるわ。

後に、宮沢賢治は認められるんだもの。」

作者は、窓を開けてかな夜空を見上げた。

「そうですね。死んでなお、誰かが自分の作品を愛してくれる…それは素敵でしょうね。」

「そうね…でも、私は、生きているうちに認めてもらいたいわ。

その点では、ゴッホも宮沢賢治にもなりたくはないわね。

エログロ作家と言われても…私は、江戸川乱歩みたいな作家になりたいわ。」

作者は、そう叫んで、それから、ばつが悪そうに私に呟く。


「勿論、あんな一流にはなれないだろうけど…底辺なりにそっち方面で、と、いうことよ。」

作者のぼやきに、私は、赤いスパークリングワインで答えた。

「ええ。まずは明けましておめでとうございます。

今年も…頑張りましょう」


雨にも風にも負けずに…我々は完結を迎えられるのでしょうか?

まずは、そんな気持ちは忘れずに行きたいのです。


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