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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文
357/500

ゴッホを語る

冬の夜はあっという間に忍び寄り、知らないうちに体を冷やします。


私はコーヒーにリンゴ酒と砂糖を加え作者へと渡しました。


「少し…休みませんか?」

私の言葉に、作者はパソコンの画面から目をはなした。

「うん…ありがとう。」

作者はマグカップを手にすると疲れたような笑顔で私を見た。

「新作…投稿したのですね。」

「うん。なんか、ラジオの募集…ちょっぴり難しいけど、詩を書いてたから、短い文章も結構かけるね。」

作者は笑った。

「ゴッホ…ですか。」

私は、世紀末に話題になった激情の画家を思い出していた。


私の作者は、ラジオの募集で短編を応募していた。

キャラクターが、短編の動画投稿をしたがるので、作者もそれに合わせて試さないといけなくなる。

その練習を兼ねていた。

「うん…。千文字縛りだから、有名な人の方が字数が少なく済むかなって、ね。」

作者はそう言って、一度、言葉を切り、色々溜め込んだものを吐き出すように叫ぶ。

「失敗だったけど…ね(T-T)」


「失敗…しましたかね?」

私は紅茶を口に含みながら考える。

評価も貰えましたし、それほど悪くは無かったと記憶していますが。


「うん…説明しないと何を書いてるか分からんじゃない(T-T)

まあ、お陰でこっちの記事は出来るんだけどね。」

作者は、ボヤきながら『ゴッホ』の詩を開いた。


この詩は、ゴッホの死ぬ直前に見ただろうひまわりをテーマに作った。


天才とひまわりのテーマを使ったのだ。


ゴッホの『ひまわり』


バブル時代に日本の企業が投資目的で買い漁った事もあり、テレビで取り上げられ人気になった。


「ゴッホは、私も美術館で本物見たことあるよ…。

ひまわりとかは、世界にいっぱい作品が残ってるんだって。

この人、浮世絵も好きで模写したりしてるんだよね…」

作者は、そこで深くため息をつく。


「そうですね…何か、同じ感性があるのでしょうか?日本人がゴッホの絵に惹かれてしまうのは。」

私は、色鮮やかな彼の自画像を思い浮かべた。


「うーん…( ̄〜 ̄;)

バブル時代には、没後100年と浮世絵とか絡められるから、なんか、重宝された感じあるわ。

ひまわりの絵に一億とか、私には理解できなかったもん。」

作者は、昔を思い出すように空を見た。

「確かに、でも、モナリザの様に色んな謎が含まれたり、西洋絵画は日本の俳句の様な面白味がありますから。」

「うん。構図や静物が何かの象徴だったり…

『ダ・ヴィンチ・コード』は面白かったわ。」

作者は、そう言って笑った。

「そうでしたね。」

私は、今年の様々な事を思い出していた。

「うん…でも、まさか、あの耳切り取り事件が1888年だったなんて、ビックリしたわ…」

作者は、そう言って渋い顔をした。


ゴッホは、1888年の12月、切り落とした耳を手に娼館へいくと言う事件を起こしていた。

「夏には切り裂きジャック…冬はゴッホの耳切り…

どちらも娼婦が絡む事件ですね。」

「うん…ジャックは娼婦を切り、ゴッホは、自らの耳を切り落として渡した…と、言われているわ。

どちらも、ゾッとしない話だけど…

どちらも寂しさがにじむ事件ね。」

作者は、そう言ってため息をつく。


私は、悲しそうな作者に温かいコーヒーのおかわりを出した。

作者は、黙ってそれを受けとると、しばらく、マグカップを両手で持ちながら暖をとる。


「温かいわ…いつもありがとう。私達は仲良く続けて行きましょうね。」


ゴーギャンとの別居で混乱したゴッホを思い出したのか、作者はそう言って、弱々しく微笑んだ。

「ええ…ずっと、一緒に。」

私は、そう言いながら、作者を見つめた。


ずっと、一緒に…


この約束が守られることを祈りながら。


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