あしながオヤジ
静かな海を見ながら私は作者と曲を聴いていました。
松田聖子さんの『スイートメモリー』
この曲は、ビールのCM曲としてヒットしました。
「夕日…きれいね。」
作者は呟くようにいう。
「そうですね。」
私は雰囲気を壊したくなくて短く返事をした。
夕日のオレンジの光に作者(この人)と歩んだ日々が胸をつきます。
「この夕日の光が、人生の光に見えるわ。」
作者がぼやく。
「そうですね。」
私は同じような事を考えていた事に笑いが込み上げる。
「そうよ…なんとか、けりをつけないと。金儲けも出来ないと分かった現在、なんとか、良い感じの退場が一番の目標だわ。」
作者の言葉に頷いた。
そう、貴女と共にこの場を退場する…これは私の願いでもあるのです。
「金儲けはともかく…
良い感じの退場は私も同意します。」
私の言葉に、作者は苦笑する。
「そうね。その為にも明智小五郎を何とかしなきゃ。」
作者が深いため息をつく。
剛さんがいなくなった現在、我々の目標は夏の子供アニメの原作。
勿論、途方もない目標ですが…
モーニングを食べる…たったそれだけの願いを達成できなかった現在、手に届かないほど遠い夢のほうが、気持ちが楽なのです。
「平井太郎のお話、面白そうですよね?
召し使いは黒人の少女ではないようですが。」
私は歴史のイベントで投稿した『拝啓 平井君』を思い出した。
「うん…あれ、続きがあるんだもん。本当は、ラジオのミステリーを書く予定だったの。でも、用事があって難しいから、参加するために作った苦肉の作だもん(T-T)」
作者はぼやく。
でも…仕方ありません。今の世の中、無理をするわけには行きません。
風邪すら…熱を出すわけにはいかないのです。
「まあ…一度、失敗してますからね。」
「うん…奉公人の少女の手紙にしたら、無駄に長くて要領が得ないから、仕方なく明智の手紙で書いちゃったのよ。まあ…わりと良い出来だったと思うわ。」
作者は恥ずかしそうに苦笑する。それは、彼女の自慢したい時の顔だ。
「お気に入り…ですね。」「まあ…でも、プロローグだし。
明智小五郎は、一般的なイメージで書いて、平井太郎は、オリジナルで作りたいから、まあ、ここからが勝負なんだけどね。」
作者はそう言って、スマホから、映画『犬神家の一族』から『愛のテーマ』をかけた。
「それ、明智小五郎ではなく、金田一幸助じゃありませんか?」
私は苦笑する。
『犬神家の一族』は、横溝正史の代表作、金田一幸助シリーズの人気作品です。
横溝正史先生は、1981年12月にガンのために亡くなりました。
1981年ですから、著作権の関係で使うわけには行きません。
間違って使わないように気を付けなくては。
「うん…でも、明智と金田一…乱歩と横溝の2人の作家は仲良しで、金田一幸助も、明智小五郎の影響を受けているらしいわよ〜
テレビシリーズで、昭和モダンな男に改変されたけど、初期の明智小五郎は、金田一幸助のような、もじゃ男で、服装には頓着なかったみたいだよ。
言ってみれば、オマージュのお手本よね?」
作者はそう言って、ずる賢く笑う。
「また、変なことを考えてますね?」
私は深く溜め息をつく。
「あら、変じゃないわ。ただ、私も、オマージュの練習をしたいと考えてるだけよ。
金田一幸助の版権は切れてないけど…明智小五郎は切れてるし、元々は、明智小五郎が、もじゃ男なんだもん。
明智デビュー100年周年で、元のイメージで作品作っても…文句は言われないと思うわ。」
作者は笑う。
「それは、他を何とかしてからにしてくださいよ。」
私は呆れる。大体、忙しくて、秋の歴史はプロローグを手紙にして誤魔化し投稿してるくらい、忙しいのです。
「わかっているわよっ。でも…私は、稲垣吾郎さんの金田一幸助をとられてモヤモヤしてたんだもの。
あれから5年…金田一幸助は、他の役者さんがやってるし、思いきって明智小五郎にしてみたら、また、五郎さんが見れる気がするんだもん。」
作者はそう言って、少し恥ずかしそうに空を見る。
「まあ…我々が、なろうデビューした頃に金田一幸助の役者が変わりましたからね。」
私は、2017年の秋を思った。
稲垣吾郎さんが新しく活動を始めた頃、我々がなろうにログインしたのです。
その為、強く印象に残っているのでしょう。
「あら…これは、作戦でもあるわ。明智小五郎は、乱歩先生が、等しく分け与えてくれた遺産なのよ?
誰でも…その物語を描けるの。
物語をはじめからかけなくても…誤字があろうと、構成文だろうと…そこに、想いが込められていたら…人は共感してくれるわ。
金田一幸助は、難しいけど、明智小五郎は、誰が演っても良いんだし、なにしろ、もうすぐ、100年周年!!
大好きな推しに、新しい役をプレゼントって、素敵でしょ?」
作者はそう言って、深く溜め息をつく。
「どうしました?」
「うん…『乱歩様…』思い出してね。あれ、推しに、役を贈る物語なんだよね(T-T)
随分、方向が変わってきたから、たまに、ボヤいて修正しないと。」
作者は深く溜め息をつく。
「そうですね。あの話も…先を進めないと。
読んでくださる方々がいるのですから。」
私は、やる気を取り戻し始めた作者を見て安心した。




