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茶色いノート  作者: ふりまじん
近代魔術を語る
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時影、近代魔術を語る番外 22

「私が、ファーストいいねを貰って、浮かれて『とび蛙』を読んでた頃、一人のコメディアンが亡くなったの。


それほど、気にした事は無かったけど、しばらくしたら、とても悲しい気持ちになったわ。


友人も、還暦になったばかりで、彼とイメージが重なったのもあるわ。


最近、音信不通で心配なのよ。



ふと、とび蛙と、そのコメディアンが重なったわ。

そして、思ったの、トリペッタって、無垢な心の象徴なんじゃないかって。


人を貶めて笑いをとるような喜劇を作る場合、道化には必ず、トリペッタを…心の美しさを一緒に置かなきゃいけないんじゃないかって。


私も、あいつの話を作るとなると、アイツをバカにして笑いをとる形になるんだもの。


私は、アイツの隣に、ちゃんとトリペッタを…愛情や美しさをつれているのか、心配になったわ。


書くことに、随分と躊躇もするけど、もう、チャンスは少ないわ。


書くしかないのよ。


そんな事を考えて、最近、ずっとモヤモヤしていたわ。


そして、テレビやネットで、そのコメディアンの笑顔を見て、思ったの。


その人は、トリペッタを自分ではなく、相手に見ていたのではないか、と。


ポーの作品のとび蛙は、苛められて芸を嫌々していたんじゃなく、同郷のトリペッタを笑わせたかったんじゃないかって。


だから、どんなに、酷いイジリにも上手く対応して来たんじゃないかって。


とび蛙は、自分が頑張ることで、トリペッタに注目がいかないよう、少しでも気持ちが安らぐよう…頑張ったんじゃないかって。


あの…コメディアンも…集まるお客さん一人一人の心に住むトリペッタ、幼心に向かって芸をしていたんじゃないかって、そう考えたら、悲しくなったわ。」

作者は、悲しそうに目を伏せた。

私は、そんな彼女を見つめるしかなかった。


メフィストは、演奏を終え、そして、ポケットからちょび髭を取り出すと装着した。


そして、ドタ靴で、楽しそうにステップを踏んで、空中から一輪の白ゆりを取り出して作者に渡した。


「さあ、もう、なかないで。道化芝居の裏側をしんみり解説なんてされちゃ、こちとら、商売あがったり。さあ、踊りましょう。」



そうして、流れる曲は映画『街の灯』から、街の灯。チャップリンが作曲した美しい曲です。


この映画は、盲目の女性を助けて投獄された貧しい男の物語。


メフィストは、作者と踊り終わると、グッと抱き締めて、そして、「ありがとう」と、耳元でささやきました。


気持ちのいい光景とは言えませんが、道化として登場する事の多い、メフィスト・フェレスには、作者の言葉が刺さったのかもしれません。


作者は、そんなメフィストの気持ちを知ってか、知らずか、大声でわめいて、文句を言っています。

 そう、百合の花粉は一度つくと取れないのです。

 わけを知ってメフィストは高笑いをし、そして、私の作者を抱き上げて回し始めました。


さあ、助けに行きましょうか。


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